「老後資金はなんとかなった」とホッとしたのも束の間、ふと心を曇らせるのは、2階の4畳半に住み続ける娘の存在。引きこもりではないものの、正社員経験ゼロのまま40代に突入した“実家暮らし”の我が子。このままでは老後どころか、「人生100年時代」に親子共倒れになりかねない――そんな不安に向き合う夫婦を例に、FPの三原由紀氏が解説します。
まさか、うちの娘が…年金22万円・貯蓄3,000万円の60代夫婦、老後資金は万全だが心から笑えない。原因は「自宅2階・4畳半の部屋に居座る我が子」の存在【FPの助言】
FPが考える「今からできる対策」とは?
このような「中年子ども同居問題」は、家計負担だけでなく、介護や相続といった将来の問題においても長期的なリスクになり得ます。親の老後の安心と子どもの自立、どちらも大切にするためには具体的な対策が必要です。
実家に住み続ける子どもを悪者にする必要はありません。ただし、親子ともに「このままで本当にいいのか?」と、一度立ち止まって考えるタイミングは必要です。以下の3つのステップを参考に、少しずつ“健全な距離感”を取り戻しましょう。
1.子どもとの家計を“見える化”する
まずは家計簿を通じて、実際に由美さんにどれだけの支出がかかっているのかを「見える化」すること。食費・光熱費・通信費・住宅費の“無償提供”がどれほどの金額にのぼるかを可視化し、それをもとに話し合いの機会を持ちましょう。これが自立支援の第一歩になることでしょう。
あわせて、料理や洗濯、家計管理などの「生活スキル」についても確認し、親がいなくなった後もひとりで暮らせる力が備わっているかを客観的に見ていくことも大切です。
2.「親なき後」のことを共有する
自分たちにもしものことがあった後、由美さんが生活していけるのか。住まいの継承や維持費、相続対策、年金、公的支援制度など、必要な情報を共有することが大切です。「お金の問題」は避けて通れないからこそ、冷静に話し合っておく必要があります。
3.子どもの自立支援を“外注”する選択肢も
親子間だけでの話し合いが難しい場合は、地元自治体の自立支援窓口やキャリアカウンセラー、就労支援サービス、心理カウンセリングなどを活用するのもひとつの手です。特に年齢が上がるほど再スタートの心理的ハードルが高くなるため、第三者の介入が突破口になることもあります。
また、就労だけでなく、外の人との関わりを増やすことも重要です。ボランティアや地域活動などを通じて社会との接点を持つことで、由美さん本人の自己肯定感や「自分の人生をどう生きるか」という意識が育ちやすくなります。