「老後資金はなんとかなった」とホッとしたのも束の間、ふと心を曇らせるのは、2階の4畳半に住み続ける娘の存在。引きこもりではないものの、正社員経験ゼロのまま40代に突入した“実家暮らし”の我が子。このままでは老後どころか、「人生100年時代」に親子共倒れになりかねない――そんな不安に向き合う夫婦を例に、FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
まさか、うちの娘が…年金22万円・貯蓄3,000万円の60代夫婦、老後資金は万全だが心から笑えない。原因は「自宅2階・4畳半の部屋に居座る我が子」の存在【FPの助言】
増える「中年子ども」とその親…“実家暮らし”は悪なのか?
実家暮らしの中年子ども、いわゆる「パラサイト・シングル」「子ども部屋おじさん/おばさん」といった言葉が、かつて流行しました。
しかし実際には、近年の非正規雇用の増加、物価上昇といった背景から、「実家暮らし」を選ばざるを得ない人も多いのが実情です。
みずほリサーチ&テクノロジーズが2019年に発表したレポートによると、親と同居している40代・50代の未婚者数は1995年には約113万人だったのに対し、2015年には約341万人と、20年間で約3倍に増加しています(総務省『国勢調査』のデータを基にした数値)。
また、40代・50代人口に占める「親と同居する未婚者」の割合も、1995年の3.1%から2015年には9.9%に上昇しており、同居は「例外」とは言えなくなる日は近いのかもしれません。
親にとっては、家族がそばにいる安心感がある一方で、日々の生活費負担や子どもの将来への不安がつきまといます。また子ども側も、年齢を重ねるにつれて「今さら自立なんて……」という心理的な壁を感じやすくなるのではないでしょうか。
こうした実家依存の構造は、親子関係をこじらせるだけでなく、親の老後資金が目減りする一因にもなり得るのです。