昨年1月にスタートした新NISAの影響もあり、投資家人口が増加。金融庁によると、2025年3月末時点のNISA口座数は2,600万超で、前年比約300万口座(約13%)増加しているそうです。しかし、NISAは投資のハードルを低くしてくれた反面、十分な知識がないまま投資を始めた結果、後悔するケースも少なくないようで……。とある共働き家庭の事例をもとに、山﨑裕佳子FPが解説します。
どうしよう…49歳妻が“夫に内緒”でNISA開設→トランプ関税で「100万円超の大損」も、年収850万円の53歳夫が“まったく怒らなかった”ワケ【FPの助言】
投資失敗を夫に告白…夫から返ってきた「まさかのリアクション」
この出来事のあと、千佳さんは俊さんに一連の経緯を打ち明けました。すると意外にも、夫は千佳さんを責めるようなことはありませんでした。
「そうだったのか……俺のせいで心配かけてしまってごめん。実は今日、人員整理の詳細が出てさ。俺、対象外だったんだ。上役に聞いたら俺は事業継続に必要な人材だって。会社に残れることになったんだよ!」
「本当!? よかったじゃない! あぁ、ほっとした……」
また、夫婦はこれを機にお互いの資産状況について報告。今後のお金の使い方を見直すことにしました。
千佳さんの現在の資産は定期預金の1,000万円と株を売却したお金400万円の計1,400万円ですが、俊さんの預金口座には合計2,500万円あるといいます。幸いにして、俊さんの収入は当面現状維持。支出もいまのままキープできれば、資金面で問題はありません。
「焦って投資をはじめる必要なかったじゃない……」
投資の大原則
夫のリストラ危機から勢いで投資をはじめた千佳さんは、投資に対する知識や準備が不足していました。
将来のお金の不安は、先の見通しを立てることで軽減できます。そのためにまずは、人生後半のライフプランを立ててみましょう。
仕事はいつまで続けるのか? 退職金と年金の見込額は? これから大きな支出をともなうライフイベントを計画しているか? 老後の生活拠点はどこにするのか? などなど、夫婦で話し合いながら今後の大きなお金の流れをつかみましょう。
資金不足が不安であれば「収入を増やすために長く働く」「支出を減らすために節約する」「お金に働いてもらう」ということが必要かもしれません。
お金に働いてもらうとは、投資をしてお金を増やすという意味ですが、投資にはリスクがともないます。「必ず増える保証もなければ、元本保証もない」ということを肝に銘じておく必要があるでしょう。
千佳さんの「その後」
日経平均の大幅下落からほどなくして、日経平均株価は上昇に転じました。千佳さんの持っていた株や投資信託も、ほぼ元の水準に戻っています。
「あ~、あのとき売らなければよかった……」
千佳さんは深く後悔しています。
これを機に、千佳さんは投資について本格的に勉強を開始。理解が深まるなかで「きちんと勉強して準備できたら、夫ともう一度チャレンジしたい」と話していました。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表