ここ数年の物価上昇は、私たちの日々の暮らしに大きな影響を与えています。食料品や光熱費、日用品等の生活に欠かせない支出の多くが上昇し、家計のやりくりは年々厳しくなっています。特に、固定収入で暮らす年金受給者にとっては、これらの物価上昇は、生活の質そのものに直結する深刻な問題です。今回は、長男一家と同居しながら生活費の一部を年金で支える70代女性のケースを通して、物価高騰が年金生活に与える影響と家族との向き合い方、そしてこれからの暮らしを守るヒントについて、南真理FPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
この生活、どこまで続けられるのだろうか…「年金13万円」が家族4人の命綱。息子一家と暮らす75歳母、「値上がりに次ぐ値上がり」で切迫する暮らしに沈鬱の日々【FPの助言】
自分だけで抱え込まず、話し合うことから始めよう
物価上昇と子世帯の収入が不安定という二重の負担を抱えながら、年金で家族を支えている鈴子さん。かつて思い描いていた「穏やかな老後の暮らし」は、現実の中で少しずつ遠ざかっているのかもしれません。
しかし、そうした不安や重荷を一人で抱え込んでしまうことが、最も避けるべき状況です。生活費の負担、将来の医療や介護への備え、家計への行き詰まり…いずれも「話し合い」と「共有」がなければ、状況は改善しません。お金の話は、気まずく感じたり、遠慮してしまったりするものです。
それでも、家族の将来を守るためには、現実を見据えて率直に話すことが大切です。「支える・支えられる」という一方通行ではなく、それぞれの立場や役割を見つめ直すことが、無理なく共に生きる形を築く第一歩になります。
そして、制度や支援策、専門家のアドバイスを活用することも、老後の安心を守る手段の一つです。抱え込まずに、助けを求める。この行動こそが、これらの暮らしに必要な「選ぶ力」なのかもしれません。
<参考>
・総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)3月分(2025年4月18日公表)」
南 真理
ファイナンシャル・プランナー