止まらない物価上昇が年金生活者の暮らしを直撃

ここ数年の物価上昇は家計に深刻な打撃を与えています。それは、現役世代にとっても大きな負担ですが、鈴子さんのように年金収入に頼って暮らす高齢者にとっては、さらに深刻な問題と言えるでしょう。

私たちが日々の暮らしの中で一般に購入する商品やサービスの価格が、どのように変動するのかを知るために用いられるのが、「消費者物価指数(CPI)」です。この指数を見れば、物価が上がっているのか、下がっているのかを数字で把握することができます。

総務省統計局の公表によると、2025年(令和7年)3月分の消費者物価指数(CPI)の総合指数は、2020年を100とした場合、111.1となり、前年同月比3.6%の上昇。また、生鮮食品を除いた総合指数は110.2で、前年同月比3.2%の上昇、生鮮食品およびエネルギーを除いた総合指数は109.2で、前年同月比2.9%の上昇となりました。

コロナ禍からの経済回復に加え、ウクライナ情勢による原材料価格の上昇や円安の影響が重なり、日常生活に密接なエネルギー・食料品等の価格が上昇しています。

さらに注目すべきは「エンゲル係数」の上昇です。エンゲル係数とは、家計全体の消費支出に占める食費の割合を示すもので、一般的に数値が低いほど生活水準が高いとされています。

総務省が公表した「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要 」によれば、2024年の家計のエンゲル係数は28.3% と前年から上昇し、1981年以来43年ぶりの高水準となりました。これは収入における食費の負担が大きくなっていることを意味しています。

一方で、年金の支給額は物価や賃金の変動に応じて年に1回見直されますが、2025年(令和7年)の年金額は、前年度比で1.9%の引き上げにとどまり、現在の物価上昇ペースには追いついていません。

こうした状況の中、食費や光熱費といった避けることのできない支出を年金の中でやりくりするのは、ますます困難になっています。ましてや、鈴子さんのように家族の生活の一部を支えているとなれば、その負担は計り知れません。