以前より夫婦共働き世帯が増えたとはいえ、実際には「夫がフルタイム・妻がパート」という家庭が少なくありません。そのため、夫が病気や事故などで早くに亡くなった場合、のこされた妻と子どもの家計が破綻危機に陥ってしまう場合があります。A家は6年前、高校1年生の娘と51歳のAさんをのこして夫が逝去。Aさんは、どのようにして生活を乗り切ったのでしょうか。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、事例をもとに解説します。
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Cさんは見事第一志望に合格…A家の「その後」
FPに相談後、Aさんは娘に次のように話しました。
「進路のことだけど、お金のことは気にしないで。あなたの行きたい大学に行きなさい。だけど、相談があるの」
そして、給付型奨学金と授業料減免制度について説明し、Cさんはこれを了承。Cさんは勉学に励み、その後、高校3年生になったタイミングで、学校で募集のあった給付奨学金に申し込みました。
無事に学力と家計の基準を満たしたCさんは、その年の秋に「採用候補者決定通知」を受け取り、見事第一志望の大学に入学しました。
奨学金だけでは学費を賄うことが難しかったため、Aさんが死亡保険金を取り崩したり、Cさんも講義の合間にアルバイトをしたりして大学生活をまっとうしました。
娘は晴れて就職も…Aさんの「老後問題」はまだ未解決。筆者の助言は?
そして、Bさんの死から6年が経ち、Cさんは4年間の大学生活を終え、希望した企業に就職。これを機に実家を離れ、新生活をスタートさせました。
51歳になったAさんは、自身の老後に向けた準備をスタートするそうです。
Aさんの家計収入は、パートと遺族年金で月約18万円と変わりはありません。今後も今の職場で65歳まで働きたいし、また職場からも、厚生年金に加入してフルタイム月20万円で、働かないかと勧められているそうです。
Aさんのように、「遺族厚生年金と老齢厚生年金」を受取れる人は、65歳以降、自分の老齢厚生年金を全額受け取り、遺族厚生年金は、老齢厚生年金を上回る部分のみ受取れます。遺族厚生年金より、自分の老齢厚生年金のほうが高いと、遺族厚生年金は受け取れません。
そこで筆者は、Aさんがこの先65歳まで約14年間、月8万円のパートで働いた場合と、月20万円厚生年金に加入して働いた場合の、65歳からの年金受給額と、働いている間の社会保険料を社会保険労務士に試算してもらいました。
■月8万円のパートで働く
65歳からの老齢厚生年金+遺族厚生年金の受給額は月12万3,300円です。ただAさんは、住民税非課税世帯ですので、国民年金保険料は減免はされます。その分将来の年金受給額も減るため、ここは、60歳まで月17,510円(令和7年度の額)の保険料は、納付したほうがいいでしょう。国民健康保険料を含めて、詳細は居所の自治体で確認してみてください。
■月20万円のフルタイムで働く
65歳からの老齢厚生年金+遺族厚生年金の受給額は月11万8,233円です。パートで働くより、月5,000円受給額は減ります。理由は上述の通り、自分の老齢厚生年金の受給額が増えるからです。
また65歳まで厚生年金に加入すると、厚生年金と健康保険、それに所得税などで、通常、月約4万円給与天引きされ、手取りは約16万円となります。厚生年金には、傷病手当金など国民健康保険にはない、手厚い制度もあり、またパートより2倍の収入となります。その差額の一部を資金に、NISAなどで金融商品を運用してもいいでしょう。
![[図表]遺族年金と遺族厚生年金の受け取り方のイメージ 出所:日本年金機構「受取れる年金を選択する手続きのご案内」を引用](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/0/6/540mw/img_069bf873f42ddd6a0dfc9ad3a858461317545.jpg)