Aさんが知らなかった“特別な年金”

しかし、筆者は、Aさんが年金事務所でもらってきた書面を見て、あることに気づきました。Aさんは40歳以上65歳未満であることから「中高齢寡婦加算」の支給要件に当てはまります。

そのため、遺族基礎年金が終了する翌月からAさんが65歳になるまでのあいだ、遺族厚生年金に62万3,800円(月5万1,983円)が加算されるのです
※ 令和7年度の額。

つまりAさんは、65歳までパートと遺族年金で月に約18万円の収入が見込めます。これはA家の生活費とほぼ同額とのこと。つまり、死亡保険金などを計画的に取り崩していけば生活自体は可能です。

しかし、Cさんの大学進学後の学費は引き続き懸念点でしょう。

学費は「給付奨学金」と「授業料等減免」制度が助けに

Cさんが志望している私立大学は、授業料などが毎年約120万円かかります。

Cさんの高校卒業時、死亡保険金や死亡退職金を含めたA家の貯蓄は約1,250万円になりそうですが、Aさんの老後を考えると、この貯蓄をすべてCさんの学費にあてるのはためらわれます。

そこで、日本学生支援機構(以下:機構)などの奨学金を活用することにしました。

Cさんのような、自宅から私立大学に通学する学生に対する機構の給付奨学金は、毎月3万8,300円(第Ⅰ区分:住民税非課税世帯)となっています。採用後も毎年、適格認定といって、機構に本人や学校から、在籍や学業の報告により奨学金が打切られたり、家計の所得や資産により支給額が見直されたりします。

※ 詳細は日本学生支援機構HPを参照のこと。

ただし、機構の奨学金は入学後に振り込まれるため、入学までに必要な分は別途準備が必要です。

また、上記の「給付奨学金」といっしょに、国の「授業料等減免」制度も受けることができます。A家は住民税非課税世帯のため、私立大学の授業料減免上限額(年間)70万円と、入学金減免額上限(1回限り)26万円です

※ 参照:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」

なお、日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集」によると、令和5(2023)年度において、給付奨学金は、おおむね10人に1人(10.0%)、34万人の学生に1,528億円支給されました。