以前より夫婦共働き世帯が増えたとはいえ、実際には「夫がフルタイム・妻がパート」という家庭が少なくありません。そのため、夫が病気や事故などで早くに亡くなった場合、のこされた妻と子どもの家計が破綻危機に陥ってしまう場合があります。A家は6年前、高校1年生の娘と51歳のAさんをのこして夫が逝去。Aさんは、どのようにして生活を乗り切ったのでしょうか。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、事例をもとに解説します。
恨みます…夫を亡くした月収8万円・貯金350万円の45歳女性「まさかの遺族年金額」に絶望→日本年金機構に“涙を浮かべて感謝”したワケ【CFPの助言】
Aさんが知らなかった“特別な年金”
しかし、筆者は、Aさんが年金事務所でもらってきた書面を見て、あることに気づきました。Aさんは40歳以上65歳未満であることから「中高齢寡婦加算」の支給要件に当てはまります。
そのため、遺族基礎年金が終了する翌月からAさんが65歳になるまでのあいだ、遺族厚生年金に62万3,800円(月5万1,983円)が加算されるのです※。
※ 令和7年度の額。
つまりAさんは、65歳までパートと遺族年金で月に約18万円の収入が見込めます。これはA家の生活費とほぼ同額とのこと。つまり、死亡保険金などを計画的に取り崩していけば生活自体は可能です。
しかし、Cさんの大学進学後の学費は引き続き懸念点でしょう。
学費は「給付奨学金」と「授業料等減免」制度が助けに
Cさんが志望している私立大学は、授業料などが毎年約120万円かかります。
Cさんの高校卒業時、死亡保険金や死亡退職金を含めたA家の貯蓄は約1,250万円になりそうですが、Aさんの老後を考えると、この貯蓄をすべてCさんの学費にあてるのはためらわれます。
そこで、日本学生支援機構(以下:機構)などの奨学金を活用することにしました。
Cさんのような、自宅から私立大学に通学する学生に対する機構の給付奨学金は、毎月3万8,300円(第Ⅰ区分:住民税非課税世帯)となっています※。採用後も毎年、適格認定といって、機構に本人や学校から、在籍や学業の報告により奨学金が打切られたり、家計の所得や資産により支給額が見直されたりします。
※ 詳細は日本学生支援機構HPを参照のこと。
ただし、機構の奨学金は入学後に振り込まれるため、入学までに必要な分は別途準備が必要です。
また、上記の「給付奨学金」といっしょに、国の「授業料等減免」制度も受けることができます。A家は住民税非課税世帯のため、私立大学の授業料減免上限額(年間)70万円と、入学金減免額上限(1回限り)26万円です※。
※ 参照:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
なお、日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集」によると、令和5(2023)年度において、給付奨学金は、おおむね10人に1人(10.0%)、34万人の学生に1,528億円支給されました。