定年後の環境の変化やストレスから起きる心身の不調

青木さんのように、定年後に心身の不調を感じる人は少なくありません。うつ病の治療には医療費もかかり、医療費の増加が家計を圧迫するリスクがあります。定年後は収入が限られるため、新たな不安材料になりかねません。

「老後資金が十分あれば安心」と考える人は多いと思いますが、現実には「老後生活自体への準備」が足りていない人が少なくありません。老後資金の備えはもちろん大切です。最低限必要な老後資金が準備できていなければ、安心した老後生活を送ることはできません。

そのため、例えば「老後資金が2,000万円あれば安心」といった数字を目標にする方が多いと思いますが、お金の準備に気を取られるあまり、退職後に「自分は何がしたいのか」から目を逸らしていませんか？

いくらお金があっても、目標もなくただ過ごす毎日では、心が満たされません。老後の資金計画と合わせて、「どんな暮らしをしたいのか」「何を楽しみに生きるのか」まで含めたライフプランを定年前に立てておくことが大事です。

仕事や家庭外の人間関係が少ないと感じる方は、以下のようなことから活動の場や交友関係を広げておくといいでしょう。

・再就職やボランティア活動

無理のない範囲で働くことで、社会との接点が保たれ、経済的にも安心材料になります。

・趣味や習い事

定年前から興味のあることにチャレンジしておくことで、退職後も自然と活動の場を持てます。

・人間関係の維持・構築

仕事以外で付き合える友人や地域のつながりを持つことで、孤立を防ぎます。

定年後になにかを始めようとしても加齢により腰が重く、若い頃のように気力も起きないもの。若い時よりも環境の変化に適応する難しさがあり、想像以上に大変です。だからこそ、定年退職の5〜10年前から少しずつ準備を始めることが大切です。また、運動・食事・睡眠といった生活習慣を整え、規則正しい生活を送ることが心身の健康維持の基本です。