遺族年金が少ないのはこの国のせい…追い込まれた様子の理恵さん

FPのもとを訪れた理恵さんは、追い込まれた様子で次のように訴えます。

「遺族年金のこと、なにも知りませんでした。こんなに少ないなんて……。決して夫が悪いわけじゃない、それはわかっています。遺された者を救済する気がないこの国が悪いんだ……」

この理恵さんの言葉にFPは少しだけ困惑した表情を見せましたが、遺族年金のしくみについて下記のように説明したあと、いくつか家計改善策を提案しました。

遺族年金の平均額は…

公的年金制度の「遺族年金」には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。ただし、会社員の夫が死亡して、子どもがすでに18歳(年度末)を過ぎている場合、妻には遺族厚生年金が支給され、遺族基礎年金は支給されません。

遺族厚生年金は、亡くなった人の厚生年金加入記録をもとに計算されます。支給額は原則として、故人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当額です。

なお、夫の死亡当時、妻が40歳以上65歳未満であれば、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算される場合もあります。

統計上、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算の合計で受給する場合、遺族年金の平均額は年額129.6万円ほど。つまり、月額では10万円強が平均です。

※ 「年金制度基礎調査(遺族年金受給者実態調査)令和3年」より。「厚生年金のみ・中高齢寡婦加算あり・基礎年金歴なし(妻)」の場合

理恵さんの遺族年金は平均よりも多いが…

宏さんは大学卒業以来、35年以上会社員を務めていました。そのため、夫を亡くした理恵さんには遺族厚生年金が支給されます。一方、息子である慶太さんは18歳を超えていることから、遺族基礎年金は受給対象外です。

死亡当時の厚生年金加入記録から、老齢厚生年金(報酬比例部分)は128万円と計算されました。したがって、その4分の3である96万円が理恵さんへの遺族厚生年金となります。

理恵さんは現在56歳と、40歳以上65歳未満であることから、これに「中高齢寡婦加算」が約62万円加算され、合計で年額158万円。月額に直すと、13万円程度になります。

先述のとおり、平均額は月額10万円強ですから、理恵さんが受け取れる額は平均以上です。

これを知った理恵さんは「そうなんだ、これでもまだ私は多いほうなんですね……」とこぼしました。

しかし、遺族年金だけでは生活が十分でないことも事実です。そのため遺族年金以外の収入や蓄え、今後の支出の抑制について考える必要があります。