国は、一定年齢以上になると定期的にがん検診を受けることを推奨しています。「要精密検査」を無視すると、早期発見の機会を逃しかねません。本稿ではニッセイ基礎研究所の村松容子氏が、がん検診で「要精密検査」という結果が出ても受診しない理由について詳しく分析、解説します。
精密検査を受けた人の1.0~5.5%程度にがん発見…それでもがん検診の「要精密検査」の結果を無視する理由 (写真はイメージです/PIXTA)

1――はじめに

国は、一定年齢以上になると定期的にがん検診を受けることを推奨している。「がん検診で『要精密検査』は%?1」では、厚生労働省による「地域保健・健康増進事業報告の概況」から、これらの住民検診において、要精密検査となった人がどの程度いて、そのなかから実際にがんが見つかった割合がどの程度かについて紹介した。

 

[図表1]”住民健診”におけるがん発見状況

 

2021年度の地域検診では、「要精密検査」といわれた人のうち、胃がん84%、大腸がん82%、肺がん70%、乳がん90%、子宮頸がん78%が精密検査を受けていた。

 

しかし、精密検査を受けていない精検未受診者も、胃がん5.9%、大腸がん6.0%、肺がん13.3%、乳がん2.9%、子宮頸がん6.5%と、少なくない2(図表1)。精密検査を受けた人の1.0~5.5%程度にがんが見つかっていることから、「要精密検査」のまま精密検査を受けないことで、がん検診を受けたにもかかわらず、早期発見の機会を逃しかねない。

 

そこで、本稿では、2021年にニッセイ基礎研究所が実施した「がんの備えに対する意識調査」から、精密検査未受診者の状況を紹介する。