就職氷河期やリーマンショックを経験した団塊ジュニア世代は、貧乏くじ世代と呼ばれることも。彼らは50代になったいま、リストラや転職についてどう考えているでしょうか。『今日、50歳になった 悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)著者でルポライターの増田明利氏は、50歳~54歳の5人にインタビューを行いました。詳しくみていきましょう。
辞めたくなるように誘導するんです…就職氷河期世代の50代サラリーマンが暴露。終身雇用の国・日本で「使えない会社員」が受ける仕打ち
リストラには“馬の耳に念仏”の精神
安田:テレビとか週刊誌が取り上げるような非情なリストラって本当にあるんですか?
早瀬:リストラ部屋に送り込むなんて荒っぽいことはやらない。下手したら人権問題になるし会社の評判も落ちるでしょ。辞めたくなるように誘導するんです。
望月:短期間に異動を繰り返す。人事査定を低くする。営業だったらノルマを増やし達成できなかったらネチネチいじめる。わざと若い上司の下で働かせる。やり方はいろいろあるんです。嫌気がさして自分から辞めると言ってくれたら万々歳。以前はこんな感じだった。
菅原:今は極めて事務的に淡々とやってます。もうあなたにやってもらう仕事はありません。退職に際してはこれだけの支援をしますというように。
安田:ターゲットにならない手はあるんですか? 参考になれば夫に教えておきたいので。
早瀬:まず余計なことは喋らないことです。愚痴や悪口はご法度。会社では「ここだけの話」なんてありません。昔から壁に耳あり障子に目ありというでしょ。
菅原:資格自慢も危ないですよ。行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士のような難関資格を取得したとしても黙っておくことです。資格があるのならそれを活かして頑張ってくれとか、うちを辞めても困らないだろうとやられちゃいますから。
望月:資格を持っていても実務経験が問われる。求められるのは即戦力となる経験豊富な人。50歳間近になっていたら敬遠されるから資格貧乏ということもある。俺は資格を持っているから転職に困ることはないなんて思わない方が賢明だな。
田淵:リストラに関して言うと男より女の方が強い。リーマンショック後のことなのですが、いきなり仙台の営業所に転勤を命じられた女性社員が、みんなに聞こえるような大きな声で「これって辞めてくれ人事ですよねー」と大騒ぎしまして。部署の管理職では手に負えず人事部長まで飛んできて否定するしかなかった事件がありました。リストラを宣告されると肩を落として退職していく中年男性と違い、しぶとく職場に居座ろうという姿勢はあっぱれと感心したものです。
早瀬:何を言われても馬の耳に念仏という図々しさは大事ですね。
増田 明利
ルポライター