出勤や近所のお出かけなど、移動手段として日常的に「自転車」を使用している人は多いでしょう。気軽に利用できることから、つい事故のリスクを忘れてしまいがちですが、自転車事故を起こした場合、予想外に高額な損害賠償を請求されるケースが少なくないと、ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPはいいます。66歳男性の事例をもとに、「個人賠償責任保険」のしくみと事故のリスクについて解説します。
後悔は一生消えません…定年後「サイクリング」にハマった66歳元サラリーマン、必死に貯めた〈老後資金3,000万円〉の“まさかの使い道”【FPが警告】
アニメの影響で自転車にハマった66歳男性、妻の忠告を無視した結果…
――あなた今日も出かけてたでしょ? 友達と会った帰りにたまたま見かけたわよ。ねえ、やっぱりちょっと危ないわよあなたの自転車。あんなに速く走る必要ないじゃない。ケガも心配だし、うちの周りはスクールゾーンなんだから、子どもたちにケガさせたらどうなるかわかってるの? ほんと、気をつけてよ?
「はいはい、わかってるって」
妻の忠告を受け流すMさん(66歳・仮名)は、前年まで首都圏にある中堅メーカーに勤めていました。65歳で定年を迎え、資産は退職金を含めて3,000万円ほどあります。
現役時代は仕事一筋で趣味がなく、定年後に暇を持て余していたところ、サブスクでたまたま目にしたとあるアニメをきっかけに「サイクリング」にどハマり。
アニメのキャラクターのように全力でこぐわけにはいきませんが、生まれて初めて乗るロードバイクに大興奮のMさん。特に、自宅からの緩やかな坂道は、自転車で下ると季節の風を感じることができ、とても気に入っていたといいます。
妻の忠告については「いつもの小言だ」と、右から左でした。
Mさんが起こした取り返しのつかない大惨事
ある日、いつものように自転車で買い物に出かけたMさん。その日はちょうど桜のつぼみが膨らみはじめ、ついつい桜の木に気をとられたまま、交差点に進入しました。
―――危ない!
通行人の声も虚しく、Mさんの自転車はちょうど横断歩道を渡っていた小学生2人と衝突。幸いにも全員命に別状はなかったものの、1人は打撲、もう1人は転倒した際に骨折する大ケガを負いました。
「危ない」と大声をあげたのは、近くに立っていた交通指導員でした。しかし、あっという間の出来事で止めることはできなかったようです。
この証言により、Mさんの運転は「危険行為」とみなされ、被害者の治療費や通院にかかる費用のほか、親の付き添いによる休業補償、慰謝料などを含めた賠償額は約300万円にのぼりました。