人生100年時代、60~70代は、趣味や旅行などまだまだ人生を楽しみたい世代。一方で、そんなアクティブシニアは収入源が給与から年金に変わり、家計の支出項目や割合を再検討する時期でもあります。ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPが、具体的な事例をもとに“保険の落とし穴”について解説します。

あっ、終わった…年金月17万円・定年後の趣味を満喫する66歳元サラリーマン「大好きな自転車」で盛大に転倒。走馬灯でよぎった"妻のひと言"【FPが解説】
定年後、趣味を満喫する夫…一方“ぼやく”妻
現在66歳のKさんは、60歳で定年となったあと再雇用で5年間働き、現在は年金生活です。そんなKさんの趣味は自転車。会社員時代から休日の楽しみはサイクリングに出かけることでした。
「疲れていても、自転車で走るとリフレッシュできるんだ」
これからは平日も出かけられるし、少し遠出もしたい……大好きな自転車のことを考え、心躍る毎日です。しかし、そんなKさんの思いとは裏腹に、1歳年下の妻・Nさん(65歳)は心配した様子。
「もう年なんだし、自転車なんて危ないわよ」
夫の趣味を理解してはいますが、Kさんが出かける度にぼやいていました。
「なにかあったら取り返しがつかないんだから」
妻の忠告に、Kさんは「わかってる、わかってる」と生返事で応酬。
あっ、終わった…Kさんの身に降りかかった“絶体絶命の危機”
「今日は少し遠出しよう」
いつものように自転車に乗って出かけた帰り道、想定外の雨が降り出しました。
「どこかで雨宿りしようか」と迷ったものの、「雨がもっとひどくなっても困るし、このまま行こう」と家まで急ぐことに。勢いをつけて、そのまま自転車をこぎ続けました。
しかし、視界が悪いなかで障害物を避けようとブレーキをかけた瞬間、
キキ―――!!!
「あっ、終わった……」
気がつくと、視界は雨が降る暗い空。立ち上がろうと思いましたが、鈍い痛みのなか意識がもうろうとし、どうにもなりません。意識が遠のくなか、ふと妻の声が走馬灯のようによぎりました。
「なにかあったら取り返しがつかないんだから……」
幸い他人を巻き込むこともなく、Kさん自身の命にも別状はありません。転んだ拍子に顔と手足を擦りむいて出血しただけで済みました。
「なんとか自宅に帰ったんですが、あのときの妻の顔は忘れられません」
帰宅後すぐに、妻の運転する車で自宅近くの病院を受診。全身打撲による痛みはあったものの、骨には異常なく、右ひじを15針縫い、数ヵ所の傷口を消毒しました。
「ほら、だから言ったじゃない。ケガで済んでよかったわ、本当に……」
妻は、思わず涙しました。
「はぁ、やってしまった……」
「命があることを喜ぶべきだが、帰ったら妻に怒られるんだろうな……」
「医療保険って、入院しないと給付金が出ないんじゃなかったっけ……」
「再雇用が終了するときに、たしか継続するか迷った保険があったような……結局どうしたんだっけ……どんな補償だったっけ?」
妻から散々受けた忠告を無視してケガをしてしまったKさんは、申し訳なさとバツの悪さからひと言も発することができなかったそうです。