老後お金で苦労しないためには、何歳までにいくら必要なのか……数年前には「老後2,000万円問題」が話題となるなど、多くの人が気になるテーマです。年金受給額の範囲内で穏やかな日々を満喫していた60代夫婦の事例から、年金頼みの危うさと老後資金の備えの重要性をみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
あと400万円あれば…年金月25万円の69歳元サラリーマン「お気に入りの書斎」でポツリ。散歩に読書に庭いじり“穏やかな日常”が崩壊した「年金頼みの老後」の危難【FPの助言】
三木家の「その後」
健太さんはその後、FPの助言をもとに覚悟を決めて行動を始めました。まずは長年乗っていた車を売却。免許の返納が取りざたされていたこともあり、寂しさを感じつつも納得の決断です。
さらに、加入していた生命保険を解約し、解約返戻金として現金250万円を確保。介護と生活の備えとして、大きな安心材料となりました。
そしてなにより勇気のいった決断は、息子たちに状況を伝えたことです。
「本当は頼りたくなかったんだ」と涙目で話したところ、「どうしてもっと早く頼ってくれなかったの」と怒られる始末。健太さんから頼られた息子たちは快く応じ、それぞれ毎月2万円ずつ、計4万円を援助してくれることになりました。
その結果、家計は大きく改善。赤字は解消され、貯蓄の取り崩しも抑えられるようになりました。住宅ローンもあと5年で完済予定です。返済が終われば、年金だけで生活が成り立つ見込みです。
「息子たちに怒られて目が覚めました。家族一丸となってこの日々を乗り越えていきます」
後日、FPにそう語る健太さんの表情は、穏やかでした。介護は続きますが、愛する家族の存在がなによりの支えとなっているようです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表