人生100年時代、60~70代は、趣味や旅行などまだまだ人生を楽しみたい世代。一方で、そんなアクティブシニアは収入源が給与から年金に変わり、家計の支出項目や割合を再検討する時期でもあります。ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPが、具体的な事例をもとに“保険の落とし穴”について解説します。
あっ、終わった…年金月17万円・定年後の趣味を満喫する66歳元サラリーマン「大好きな自転車」で盛大に転倒。走馬灯でよぎった"妻のひと言"【FPが解説】
まさかの給付金ゼロ!?…医療保険の“落とし穴”
「医療保険」は病気やケガに備えて加入するもので、基本的には入院した場合に日額で給付金を受け取ることができます。
特約が付加されている場合には退院後の通院時に通院給付金が受け取れますが、今回のように自転車の自損事故によるケガで通院のみの場合には、支払い対象外となります。
会計を終えた妻の憔悴した表情を見て、これまで生返事をしてきた自分を反省。そして、月17万円の年金収入のなかから医療費を捻出しなければならない事実に今後の生活を案じるKさんでした。
助かった…Kさん夫妻を救った“救いの一手”
しかし、Kさんには“救いの一手”がありました。再雇用終了時、それまで入っていた「傷害保険」の契約を更新していたのです。
「年払い6,000円程度ですから、解約するのもなんだし、そのままにしたんだと思います」と、あとになってKさんは振り返ります。
傷害保険は、突発的な事故によりケガをした場合、入院や手術、通院時に保険金が支払われ、医療費の自己負担分をカバーすることができます。Kさんが補償内容を確認したところ、入院せずとも日額3,000円の傷害通院保険金を受け取ることができる契約となっていました。
「助かった……」
計10日間の通院で抜糸を終え、Kさんのケガは2週間ほどで完治。傷害保険から出た保険金は合計3万円。そのうち、数百円は支出がありましたが、家計への影響を最小限にでき、胸を撫でおろす妻とKさんでした。
「保険加入=安心」ではない
保険の加入時や更新時は契約内容を確認するものの、時間の経過とともに記憶は薄れ、いざ必要となったときに必要な保障がないケースは少なくありません。Kさんのように、更新したことすら定かでないケースも多くみられます。
「保険に加入していること」に安心するのではなく、どんなときにどんな補償が得られるのかを理解しておき、「自分に合った保障内容であること」に安心したいものです。
また、保険で備えることも大切ですが、年齢とともに体力や判断力が衰えるという自覚も大切です。雨が降ってきたとき、無理せず休憩するという選択肢もあったはずです。Kさんは事故のあと、妻の“忠告”が自身の健康と命を心から心配して言っていたものだとわかり、心底反省したそうです。しかし……。
ケガが完治したあと、サイクリングはお休みしているKさんですが「一緒に見に行く桜スポットを探しに行くんだ」と散歩に出かけようとするKさんに、やはりため息をつく妻・Nさんでした。
大竹 麻佐子
ゆめプランニング 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)
相続診断士