「長男の嫁なら義両親の介護は当然」というのは、ひと昔前の話です。時代が変わり、親も子も常識は変わった……と思いきや、いまだに“長男の嫁”に縛られるケースは少なくありません。ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPが、具体的な事例をもとに相続対策の有効性と法的解決策について解説します。

許せない…3年間を義父の介護に尽くした55歳“長男の嫁”が「遺産分割協議」で“のけ者”に。用意周到な58歳夫が準備していた「まさかの秘策」に拍手喝采【FPが解説】
義父の介護のため、泣く泣く介護離職した「長男の嫁」
都内に住むAさん(55歳)には、3歳年上の夫がいます。夫は長男のため、Aさんはいわゆる「長男の嫁」です。
義両親はA夫婦の家の近くに住んでいます。ある日、義父が転倒して骨折し、要介護状態に。義母も高齢で、夫は仕事が忙しいことから、Aさんが介護をすることになりました。
A夫婦はそれまで共働きでしたが、介護の負担が重く、Aさんは泣く泣く介護離職する決断をしました。
夫には、3歳年上で静岡に住む義姉がいます。離れて生活しているとはいえ、新幹線を使えば2時間もかかりません。
「介護が大変で……。週末の時間があるときだけでもいいので、少し手伝ってくれませんか?」
介護離職をするかどうか悩んでいたころ、Aさんがそう義姉に連絡したところ、義姉は冷たく突き放しました。
「なんでわざわざ都内まで交通費かけて私が介護しにいかなくちゃいけないの」
「甘えないで。長男の嫁なんだから当然でしょ」
「仕事を辞めて専業主婦なんて羨ましいわね」
……Aさんに感謝のひと言もなく、好き勝手に嫌味を言う始末です。
その後も、義姉は義両親の様子を1度も見に来ることはありませんでした。
そんなAさんを支えてくれたのは、夫と義父の存在です。週末には夫が率先して介護を手伝ってくれ、義父からも毎日感謝の言葉をもらっていたことで、Aさんはなんとか耐え抜くことができました。
そして昨年、3年間の献身的な介護の末、義父は逝去。通夜では、生前ほとんど義両親のもとを訪れなかった義姉が、なんのアピールか「慰めて」と言わんばかりに号泣しています。義父が亡くなった悲しみとともに、義姉からの言葉や態度を思い出し、Aさんは「許せない……」と悔し涙が溢れました。
そして、葬儀が終わり、遺産分割について話し合うことに。義姉は、「申し訳ないけど、Aさんは“他人”だから」と、同席さえも拒みます。これまで長いあいだ家族として義父と向き合い、昼夜問わず介護をしてきたAさんからすると、こうした“のけ者扱い”は酷すぎる仕打ちだと感じずにはいられませんでした。