1971年~1974年に生まれた団塊ジュニア世代。好景気に沸く中学・高校時代に描いた“明るい未来”とはかけ離れた現実を生きている人も少なくありません。新卒で商社に入社後、48歳まで“安定のホワイトカラー”だった稲葉彬さん(仮名)もその1人です。ルポライター増田明利氏の著書『今日、50歳になった 悩み多き13人の中年たち、人生について本音を語る』(彩図社)より、50代の“生の声”を紹介します。

大失敗でした…年収240万円の51歳男性、商社マンから「フリーター」に転身した“まさかの理由”【ルポ】
コロナ禍、一世一代の“勝負”に出た結果…
コロナ禍ではあったが一方で人手不足感が強くなっている。中高年世代の転職市場は過去に類を見ない活況。こんなことが言われるようになっていた。
「ここは思い切って勝負しようと思ったんです。それなりの自信もあったのですがね」
これが第1の失敗。ハローワークはもとより人材銀行、転職サービサーなどに登録。積極的にアプローチしたのだが結果は散々なもの。4か月で5社の紹介を受けたが全滅だった。
「2社は書類選考で落ちました。3社はSPI検査、面接に進めたのですが最終的にはお断りでしたよ」
昔の仕事関係の知り合い数人にもあたってみたが、年齢がネックになりやんわり断られた。はっきりと言われたわけではないが45歳以上は採らないという感じだった。
「50歳で自慢できる実績はないしコネもない。現実の厳しさを知りました」
“中高年歓迎、低資本でOK”に惹かれ…稲葉さんの「第2の失敗」
悶々としていた時期に読んだ新聞に載っていたのが、各種フランチャイズ企業の合同説明会の告知だった。
「加盟店を求めるフランチャイズ本部、代理店本部が50社集合。自分のスタイルに合った独立が可能なんて書いてありましてね、なぜだか惹かれてしまいました」
池袋サンシャインシティのコンベンションセンターでの催しに参加。十数社のパンフレットを貰ってきた。
「どれも低資本で開業できる。脱サラで独立、未経験者OK、中高年歓迎と記されていて。勤め先が見つからないなら自分で何か始めたらいいんだなんて思っちゃったわけです」
鯛焼き屋、ラーメン店、高齢者向けの宅配弁当屋、生活便利サービス、ハンコ屋、学習塾……。諸々あったなかから稲葉さんが興味を持ったのが天然素材由来の洗顔石鹸、化粧石鹸、基礎化粧品、健康食品の販売代理店だった。
「女房は大反対。どこでもいいから就職してくれと言っていたのですか聞く耳持たずになっていまして。後先考えずに突っ走ってしまいました。これがふたつ目の失敗です」