多くの人にとって「人生で最も高額な買い物」となるマイホーム。そのため、購入資金の一部を親に援助してもらう人も少なくありません。ただ、安易な住宅購入資金の受贈は、その後に思わぬトラブルを招くことも……。愛する娘からの“おねだり”を受けて住宅購入資金の援助を承諾した60代夫婦の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※プライバシー保護のため登場人物等の情報を一部変更しています。

わが子ながら情けない…〈年金月29万円・貯金5,500万円〉悠々自適な老後を楽しむ66歳の仲良し夫婦、実子への「住宅取得資金1,500万円」贈与を撤回したワケ【CFPの助言】
「住宅購入資金の援助」親が子に援助する額の平均は?
一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査(2024年度)」によると、「親からの贈与」の平均額は、新築住宅購入者が776.3万円と前年度の915.8万円より減額しているものの、既存住宅(中古)購入者が752.9万円と前年度の734.4万円より増加しています。
また、親(または祖父母)から贈与を受けた人の割合は、世帯主の年齢が30~39歳の住宅購入者の割合が最も多く19.1%。その受贈者を対象にした「直系尊属の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」の利用状況は、全体の83.4%となっています。
A夫婦の「リフォーム」は問題ないが…FPが行った「3つ」の助言
FPはA夫婦から一連の話を聞き、今後の家計収支を試算しました。
その結果、リフォーム工事を実行した場合、翌年度に固定資産税が減額になることから※、2,000万円で自宅のリフォームを実行しても、またそれ以外の夫婦の計画もこのまま実施して問題がないことがわかりました。夫婦が介護や看護のために残しておく1,000万円の貯蓄にも手をつけることはないでしょう。
※ 「バリアフリー改修工事が行われた住宅に対する固定資産税の減額」により、バリアフリー改修工事が完了した年の翌年度に、固定資産税の3分の1が減額される。詳細は居住地の市区町村担当窓口で確認のこと。
ただし、Cさんへの住宅購入資金の援助(1,500万円)や、孫への学費の援助も計画どおり行えるかというと、話は違ってきます。中学受験のために通わせる塾の費用に加えて入学後も援助を続けるとなると、A夫婦の家計は高確率で破綻を迎えるでしょう。
そこでFPはA夫婦に、現在の状況を踏まえて下記の3点を助言しました。
1.支出を減らす……不要なサブスクリプションサービスなど固定費の削減、不要な保険の解約など
2.住宅購入資金援助額の減額……Cさんへの援助は500万円を限度とする
3.孫への教育費は適正金額を渡す……全額贈与するのではなく、必要なタイミングで必要な金額を都度贈与する