多くの人にとって「人生で最も高額な買い物」となるマイホーム。そのため、購入資金の一部を親に援助してもらう人も少なくありません。ただ、安易な住宅購入資金の受贈は、その後に思わぬトラブルを招くことも……。愛する娘からの“おねだり”を受けて住宅購入資金の援助を承諾した60代夫婦の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※プライバシー保護のため登場人物等の情報を一部変更しています。

わが子ながら情けない…〈年金月29万円・貯金5,500万円〉悠々自適な老後を楽しむ66歳の仲良し夫婦、実子への「住宅取得資金1,500万円」贈与を撤回したワケ【CFPの助言】
A夫婦とCさんの「その後」
A夫婦はFPに相談した数日後、改めてCさんを呼び出しました。前回激怒した手前、AさんとCさんが沈黙を貫いていると、耐えかねたBさんが言いました。
Bさん「住宅購入資金なんだけどね、あれからファイナンシャルプランナーのところにも相談に行って、やっぱり減額できないかなって話になったの。申し訳ないけど、500万円でどうかしら?」
Cさん「……ありがとう。あのね、私も謝らなきゃいけないことがあって。実は、最初は夫と『数百万円でも援助してもらえないかな』って話だったんだ。だけど、パパとママがつくっている計画表を見たら、つい……。ごめんなさい。500万円でも十分すぎるほどよ」
Cさんは自身の過ちも白状し、親子は仲直り。孫への教育費援助も「都度贈与」でいいそうです。
ひとり娘のCさんは、今後A夫婦に介護や看護など万が一のことがあった場合、面倒を見ることになるでしょう。後見人の役割も果たすことになるかもしれません。しかし、夫婦はもしものときのために1,000万円を準備していますから、これはCさんにとっても安心材料です。
またAさんは、貯蓄や自宅の土地建物といった資産を所有しています。これは将来、Cさんに相続税が課税される可能性のあるものです。
そこで、今後は節税対策として適切な時期にCさんに資産を移していくことを決めました。
「みっともなく声を荒らげる娘をみたとき『わが子ながら情けない』と悲しかったですが、よく考えると甘やかして育てた自分たちが悪いんですよね……でも、きちんと謝れる素直な娘でよかったです。そこは妻に似たんだろうな。贈与の時期や金額についてまた相談させてください」
Aさんは照れながらそう話してくれました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員