人生において、何を削るか削らないかの取捨選択は重要です。現代社会を生き抜くうえで削ってはいけないこととは? 本校では、人気プロダクトデザイナー秋田道夫氏の著書『仕事と人生で削っていいこと、いけないこと』(大和出版)から一部抜粋・再編集し、信頼感のある大人のエッセンスであるにも関わらず、軽視されてしまうポイントをみていきましょう。
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どんなに悪い状況でも「自分を信じられること」は強い
わたしは1953年生まれですが、1976年から1978年までの3年間は、オイルショックの影響で就職氷河期。その真っただ中で就職活動をしました。大学の試験倍率は20倍を超えていました。そんな競争をくぐり抜けて、いざ就職となったら就職先の会社があまりない。びっくりですね。
最初に受けた会社には落ちました。でも悲観することはなく、「これだけ難しい状況で、これだけ勉強した自分が、就職できないのはおかしい」と居直っていました。「やるべきことをやってきた」という自信があるから、デザインの神様がほうっておくわけがないと思えたのです。悪いときでも自分を信じられるかは重要です。
よく「根拠のない自信を持て」などと言いますが、わたしの場合、根拠はあったわけです。根拠のある自信はやっぱり強いです。
謙遜はしない、本当に必要な「謙虚な姿勢」とは?
日本語の言葉には、細かなニュアンスの違いが含まれています。それだけ人間関係が濃密な民族なのだと思いますが、近い意味の言葉には、微妙な「ニュアンス」があります。たとえば「謙遜」と「謙虚」という言葉は、英語に訳すと、「Humility」というひとつのワードに集約されてしまいます。それを知ったときにはびっくりしました。なぜなら、まったく「ニュアンス」が異なるからです。
謙遜は「いやー、わたしは大したもんじゃないですよ」と相手からの「ほめ」や「からかい」を「いなす」道具としての言葉です。一方、「謙虚」というのは、自身を客観的に見つめて相手の言葉を受け止める気持ちです。
わたし自身、謙虚でいたいと思っていますが、相手の言葉よりも自分の分析のほうがもっともだと思った場合は、「いや、そのことについては自信がありませんが、このことについては想像されているよりもできるように思います」と返答するようにしていました。ちなみにほめられても、ニコニコしているだけで、「嬉しいです」とすんなりと受け止めて、「それほどではないです」なんて謙遜はしません。
秋田 道夫
プロダクトデザイナー