イタリアのバール文化

イタリアでは、バールと呼ばれるカフェで朝ごはんをとる人もいます。

その多くは家か職場に近い行きつけのバールがあり、注文しなくてもいつものメニューが出てきたり、顔なじみの朝ごはん仲間と談笑したり。食べるものはもちろんドルチェ(イタリアの朝ごはんは甘いものが定番)で、ショーケースに並ぶパニーノ(ハムなど具材を挟んだパン)はあくまでランチ用です。

バールでの主役はなんといってもブリオッシュ(南部の呼び名はコルネット)。生地に卵が入ったクロワッサンで、中身なしのシンプルなものに加え、カスタードやチョコ、最近はピスタチオなどのクリームやジャム入りがあります。あるいは生地が雑穀粉や全粒粉と粉が違うなど、種類も豊富です。その他にも、砂糖をまぶした丸いパンにクリームが入ったボンボローネ、リンゴパイ、お米のタルトなど、とにかく甘いもののオンパレード!

いっぽう飲み物はやはりエスプレッソがベースなのですが、こちらもいくつかの種類があります。普通のエスプレッソに加え、抽出時間の短いリストレット、エスプレッソの倍量の水で抽出したルンゴ、2杯分のエスプレッソのドッピオ、さらにカフェインを取り除いたデカッフェイナート。マッキアートでも足す牛乳は熱いか冷たいか、牛乳ではなくて豆乳が良いとか、さらに陶器でなくガラスカップが良いとか……。一言でエスプレッソやカップッチーノと言っても、種類も多ければそれを飲む人々のこだわりも深いのです。

1日に何度も「カッフェ?」

そしてバールは朝ごはんだけではありません。「カッフェ?(エスプレッソ飲まない?)」は、1日のあらゆる場面で登場します。

ファッション系通訳をほぼ専業でやっていた時は、1日に2、3社を訪問していたのですが、どこに行っても着くや否や聞かれるのがこの「カッフェ?」。昼も夜もご飯が終わるとレストランのスタッフから聞かれるのも、この「カッフェ?」。最初はじゃあ、と頼んでいた私ですが、1日に何杯もは辛い!と、うち数回は違う飲み物に代えてもらうようになったほどです。

多い人は1日に5、6回は飲むエスプレッソ。回数は個人差があるものの、会社や駅にはエスプレッソ自動販売機が置いてあり、なければバールに飲みに行く、と、イタリアではいつでもどこでもエスプレッソが飲めるようになっています。

しかし、飲むことだけがその目的でありません。ちょっとブレークしたい時、誰かと一緒にいたい時、話したい時の最良のお供がエスプレッソ。ぐいっと一杯飲みほして気分をリセットしたり、パワーチャージしたり。カウンターでなじみのバリスタ(バールで飲み物を準備するスタッフ)と言葉を交わしたり、そうして誘った友人と飲み終わった後もそのまま会話を楽しんだり。まさにイタリア人の日常に欠かせない、生活の潤滑油のようなものなのです。

バリスタは、イタリアの働かないイメージを覆すスーパースキルの持ち主。さまざまな顧客のリクエストを同時進行で聞きながら作り、さらには雑談しながらも間違えることなく完璧にミッションを遂行します。「バリスタくらい他のイタリア人もテキパキ働けばいいのに」、と口からもれそうになったのは一度や二度ではありません。