イタリア生活でのカトリック行事

イタリアはカトリック教の国。ヴァチカン市国と法王が存在するため、イタリア人は敬虔なカトリック教徒、というイメージを持たれがちです。

しかし実際は、敬虔な信者ばかりではありません。私の舅は必ずミサには参加し、私たちの結婚の際は「教会婚? 市役所婚?」と真っ先に聞いてきたほどの熱心な信者でした。しかし姑や夫はそうでもなく、ミサにもほとんど行きません。

それでもカトリックの行事は、イタリア生活には欠かせないものです。結婚式に洗礼式、小学校からは教区教会で教理学習もスタート。10歳頃には聖体拝領式12歳頃には堅信式と、子どもたちはカトリック教徒になる歩みを進めていきます。

しかし宗教的な意味合い以上に、イタリア人が張り切るのは式の時の服装や食事会、カメラマンのこと。普段は地味な人が派手な衣装に身を包んでいたり、かなり前から「式後のレストラン決めた?」と盛り上がったり、とにかくすごい気合なのです。

年間行事で最も盛り上がるのは、やはりクリスマス。正式には12月8日の無原罪御宿りの祝日(キリストの母マリアがその母アンナに宿った日)からクリスマスシーズンが始まりますが、近年のクリスマス商戦は11月半ばに幕を開けます。

スーパーではクリスマス伝統菓子のパネットーネやパンドーロがこれでもかというほどに山積みされ、観光都市ではイルミネーションやクリスマスマーケットもスタート。何よりも、子どもだけでなく大人も全員もらえるプレゼントに頭を悩ませます。準備されたプレゼントは、シーズン開始と同時に設置されたクリスマスツリーの下に置かれ、当日を待ちます。しかし、サンタの存在を信じる子どもがいる家庭では、ツリーの下に置くのはイブの晩に子どもたちが寝静まってから。

「サンタさんとトナカイさんのおやつね」とクッキーと牛乳、人参を用意し、子どもたちが起きてくる前にご丁寧にかじったりこぼしたりして痕跡を残しておきます。サンタさん来たね、のオーバーな演技もお手の物! 朝起きたら家族そろってプレゼントを開け、もらったものを披露してはハグと頬にキスを交わします。

そして一家のマンマは盛大なクリスマスランチのため、前日または当日の朝からキッチンに立ちっぱなしで大忙し。この日だけ出てくる赤のテーブルウェアや一張羅の食器セットがセッティングされ、クリスマスランチの始まり始まり、です。

フルコースというだけでなく、どこのマンマも張り切るので量もとんでもなく、もう無理、もっと食べてよ、のせめぎ合いも毎年のこと。最初の数年は断れずに満腹で死にそうだった私も、断る術を身に着けざるを得ませんでした。

つまりクリスマスは、日本の正月のように家族が揃って祝う祝祭。

大晦日は友人たちと年越しディナーやカウントダウンとお祭り気分で楽しむため、元旦はダラダラ過ごすのが一般的。そして2日からは仕事始めの人が多いです。

クリスマスシーズンの終了は1月6日の公現祭(東方三賢士が誕生したキリストを訪問した日)。クリスマスツリーをしまうと同時に、子どもたちにはベファーナと呼ばれる魔女が良い子にはお菓子を、悪い子には炭をもってくるという風習があり、ここでも靴下に入ったお菓子と炭に似せた砂糖菓子が、スーパーに並びます。

その他にも仮面コスプレのヴェネツィアに代表されるカーニバル、復活祭はコロンパに特大卵チョコと、カトリックの祝祭は宗教行事でありながらも、お菓子や催しとともにイタリアの日常に溶け込んだお楽しみイベント。カトリック教徒ではない私も、宗教と言うより文化、伝統的な慣習として一緒に楽しんでいます。