(※写真はイメージです/PIXTA)
近所の噂「ひとり暮らしなのに、買い物の量が半端ない…」
「後藤さんちの息子さんは優秀で、東京で官僚をやっている」
このような話は、このあたりでは集落一体で知れ渡っていること。たまに働いているスーパーでも客から「東京の息子さん、元気?」と声をかけられるほどだったといいます。
そんな後藤さんに新たな噂が立っていることを、後藤さん自身も感じていました。
「後藤さんの旦那さんは亡くなって、いまはひとり暮らしのはず。それなのに買い物の量が半端ないのはなぜ……」
そんな噂話に「たくさん作って冷凍しておくの。そのほうが家事も楽だし」と返していた後藤さん。しかし本当のことと教えてくれました。
――実は息子が帰ってきていて、自室にずっといるんです
体調不良で一時的に帰省していた智司さん。そのまま仕事を辞め、ほとんど自室からも出てこない生活を1年ほど続けています。しかし、そのことを近所に住んでいる親戚にも話していないのだとか。
――ここは話がすぐに伝わるような田舎です。おひれがいっぱいついて、噂話がひとり歩きしちゃう。37歳になる息子が官僚を辞めて引きこもっているなんて、恰好のネタじゃないですか。ただでさえ体調が悪いのに。息子の状態をこれ以上悪化させたくないんです。絶対知られたくないんです
業務過多が遠因となり、メンタルヘルス不調に陥った智司さん。休職というカタチでいったん仕事から離れ実家へ。そのまま回復することなく、退職しました。
人事院『公務員白書 令和5年度年次報告書』によると、令和4年度、精神及び行動の障害による長期病休者数は5,389人。全職員の1.92%にあたります。またこの5年の推移をみていくと、人数は3,818人から1,500人ほど増加し、全職員に占める割合は1.39%から1.92%と大きく増えています。増加の一因とされているのが長時間労働で、上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合は他律部署*では77.7%となっています。
*他律的業務(業務量 、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。)の比重が高い部署。他律的業務の比重が高い部署以外の部署を自律部署という
ひとり暮らしと思われていますが、食事は2人分必要。だから後藤さんは「あれっ、ひとり暮らしのはずなのに、あんなに必要?」と思われる食材を買い込んでいるわけです。
――きちんとしたところに相談をしたほうがいいとは思うのですが、本人がまだそういう段階ではないようで……今は見守ることにしているんです
[参考資料]