かつては一家の長男が後継ぎになるのが一般的でした。しかし、時代とともに親孝行、働き方の価値観は確実に変わってきています。本記事では川村隆枝氏の著書『亡くなった人が教えてくれること 残された人は、いかにして生きるべきか』より一部抜粋・再編集し、現代の後継ぎ問題の考え方について解説します。
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上京した長女、医学部生時代の愛する人をあきらめ決別。「実家の開業医」を継いだが…十数年後の“呆気ない結末”に「やるせません」
色々な形でできる親孝行
一方、高学歴であってもそれを活かせず苦労をしている若者たちもいます。家業を継がなくても多様性を重んじる現在は、色々な形で親孝行ができるのです。
かつて日本では一家の長男が後継ぎになるのが一般的でしたが、現代ではあまり見られません。その理由としては、家父長制的制度の崩壊や少子高齢化による出生数の激減が挙げられます。このような現状において、後継ぎを決めて自分の医院を継いでもらうことは容易ではありません。私自身も含めて、周囲では後継者不足で閉院を余儀なくされたところも少なくありません。最近では大病院に行く傾向がありますが、身近な医院として、またホームドクターとして、開業医の役割は大きなものがあります。
そうかといって、能力ややる気のない子供たちに親の都合で無理に医学部受験を強いると、彼らはうつになって自殺をはかったり、極端な場合は両親に殺意を抱くという恐ろしいことが起こり得ます。現に開業医の親が子供に医学部受験を強要して、疲れ切った子供が親を殺すという、信じられない痛ましいニュースも見られ愕然としてしまいます。そうなれば、双方にとってこの上もない悲劇であり、なんとしても避けなければいけません。
川村 隆枝
医師・エッセイスト