介護施設にはネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、実際には全く異なります。リハビリテーションを取り入れた施設は、利用者の生活の質を向上させ、元気に自立した生活をサポートする場。本記事では川村隆枝氏の著書『亡くなった人が教えてくれること 残された人は、いかにして生きるべきか』より一部抜粋・再編集し、Mさんの事例を通して、介護施設の本来の目的について解説します。
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介護施設の本来の目的は「自宅療養が可能になるためのリハビリをする所」
通常のカンファレンスのときに師長から「Mさんは、自宅療養が可能になりました」と報告を聞いたときには驚きました。「看取りで入った人が?」「ほかの施設となにが違ったのかしら?」というと、師長はにっこりして「さあ?」と満面の笑顔。「看護師や介護スタッフが頑張ったのですね。すごい!」「きっと雰囲気がよかったのでしょう。お疲れさまでした」と私は心から感心して労いました。
Mさんのように歩いては帰宅されないけれど、同じように自宅や別の有料老人ホームでの療養が可能になり退所されたほうがほかにも数人いました。そんなとき、他施設のスタッフから、「なんで?」「なにが起こったの?」と訝しげにいわれますが、私は、当施設の師長をはじめ介護スタッフの努力と元気で温かい思いやりや雰囲気が、弱弱しく看取りで入所された方を勇気づけたのだと、スタッフたちを大変誇りに思います。
介護施設は自宅療養が可能になるためのリハビリをする所という本来の目的を改めて再認識させられました。
川村 隆枝
医師・エッセイスト