介護施設にはネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、実際には全く異なります。リハビリテーションを取り入れた施設は、利用者の生活の質を向上させ、元気に自立した生活をサポートする場。本記事では川村隆枝氏の著書『亡くなった人が教えてくれること 残された人は、いかにして生きるべきか』より一部抜粋・再編集し、Tさん(79歳)の事例を通して高齢期に他者と交流をもつことの重要性を解説します。
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この人はおわったな…活発な79歳父がコロナ禍で車椅子生活→要介護4。意識もドロドロ、家族もわからず、諦めた息子に母が飛ばした「強烈な檄」【介護老人施設長が解説】
回復を早めたきっかけは、リハビリを通した他者との交流で
その後色々あったようですが、最終的には訪問看護とデイサービスを利用して自宅療養となりました。自宅に帰ってからも何度も転んだり、車椅子で坂を下りたり、縁側から落ちるなど問題行動が絶えなかったのですが、認知症のほうはだんだんよくなって、長男のことも分かるようになりました。
そのころから、当施設の通所リハビリテーションに通うことになりました。最初は、歩けなかったのですが、基本動作訓練のほか、立ち上がる、歩行器で歩くなど、積極的なリハビリテーションを重ねるにつれ自立歩行ができるようになり問題行動もなくなっていきました。ついには、認知機能検査も正常になり、期限の切れてしまった運転免許証を再び取得できるようになりました。
現在は車やバイクを乗り回し、元気に畑仕事をされています。これもすごいことです! コロナ禍で不本意ながら、長期にわたる病院での安静によって体を動かす時間・強さが減り、体や精神にさまざまな不都合な変化が起こった状態、いわゆる廃用症候群となりました。それでも自宅に帰り、自分のできる範囲で身の回りのことをし、規則正しく生活し、日中しっかり頭と体を動かすことによって回復が早まりました。
デイサービスでリハビリを行い、人と接する機会をつくったのも回復を早める結果になったことはいうまでもありません。ご家族、知人は完全に元に戻った姿を見て驚きと感心しきりでした。
川村 隆枝
医師・エッセイスト