回復を早めたきっかけは、リハビリを通した他者との交流で

その後色々あったようですが、最終的には訪問看護とデイサービスを利用して自宅療養となりました。自宅に帰ってからも何度も転んだり、車椅子で坂を下りたり、縁側から落ちるなど問題行動が絶えなかったのですが、認知症のほうはだんだんよくなって、長男のことも分かるようになりました。

そのころから、当施設の通所リハビリテーションに通うことになりました。最初は、歩けなかったのですが、基本動作訓練のほか、立ち上がる、歩行器で歩くなど、積極的なリハビリテーションを重ねるにつれ自立歩行ができるようになり問題行動もなくなっていきました。ついには、認知機能検査も正常になり、期限の切れてしまった運転免許証を再び取得できるようになりました。

現在は車やバイクを乗り回し、元気に畑仕事をされています。これもすごいことです! コロナ禍で不本意ながら、長期にわたる病院での安静によって体を動かす時間・強さが減り、体や精神にさまざまな不都合な変化が起こった状態、いわゆる廃用症候群となりました。それでも自宅に帰り、自分のできる範囲で身の回りのことをし、規則正しく生活し、日中しっかり頭と体を動かすことによって回復が早まりました。

デイサービスでリハビリを行い、人と接する機会をつくったのも回復を早める結果になったことはいうまでもありません。ご家族、知人は完全に元に戻った姿を見て驚きと感心しきりでした。

川村 隆枝
医師・エッセイスト