「A家の将来」をシミュレーションした結果…

FPのもとを訪ねたA夫妻は、まずこれまでの一連について話してくれました。

「息子が帰ってきたことで生活費が増えたのに、夫の介護でさらに支出が増えるんです。これからの家計は大丈夫なんでしょうか……」

Bさんの不安を可視化するため、筆者は今後のA家の家計収支を試算することにしました。

A家の現在の収入は、夫婦で月39万円の老齢厚生年金のみです。

一方支出は、Cさんが戻ってきてからは、Cさんの食費や国民年金保険料の負担などを含めて月38万円前後となっています。毎月年金をほぼ使い切っている状況です。

ただし、夫婦はCさんが就職後に転職を繰り返していることを気にかけて「万が一のときのために」と退職金の一部である約2,200万円は使わずに貯金しています。そのほかの資産としては、時価約7,100万円の自宅(戸建て)があります。

自宅のリフォームをするとなるとそれなりの費用がかかりますが、夫婦で暮らしていくうえで家計が破綻することはなさそうです。

また今後、老人ホームなどの介護施設に入居することがあっても、費用の捻出は可能でしょう。もしその施設が高額であれば、自宅を売却することも視野に入れます。

Cさんの今後は…

現在49歳のCさんは、就職後に転職を繰り返していましたが、厚生年金に加入していた時期もあります。このまま働くことなく、60歳までAさんが国民年金の保険料を負担すると、65歳からは月約9万円の老齢厚生年金の受給が見込めます。しかし、この受給額だけでは、両親が亡くなったあとの生活は難しいでしょう。

A夫妻は筆者の事務所を訪れる前に、自治体の「地域包括支援センター」や「引きこもり地域支援センター」を訪ねたそうです。そこで、Aさんの介護認定の申請を依頼するとともに、Cさんの自立支援のサポートについて相談したといいます。

そこで受けた助言をもとに、Cさんへ専門医による治療を勧めるようです。センターの就労支援を受けながら、Cさんが安定した収入を得る方法を見つけられるよう夫婦でサポートするということでした。