2010年代から国内で社会問題になっている「8050問題」。中高年の“引きこもり”を高齢の親が支える構図は、定年を迎え介護が必要になる親にとって生活が困窮しかねない深刻な問題です。具体的な事例をもとに「8050問題」の現状と解決策についてみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

お願い、俺が悪かったから見捨てないで…70代元教師の両親に「全力で甘える」49歳無職男性、年金月23万円の79歳父から告げられた〈衝撃の事実〉に号泣【CFPが解説】
「A家の将来」をシミュレーションした結果…
FPのもとを訪ねたA夫妻は、まずこれまでの一連について話してくれました。
「息子が帰ってきたことで生活費が増えたのに、夫の介護でさらに支出が増えるんです。これからの家計は大丈夫なんでしょうか……」
Bさんの不安を可視化するため、筆者は今後のA家の家計収支を試算することにしました。
A家の現在の収入は、夫婦で月39万円の老齢厚生年金のみです。
一方支出は、Cさんが戻ってきてからは、Cさんの食費や国民年金保険料の負担などを含めて月38万円前後となっています。毎月年金をほぼ使い切っている状況です。
ただし、夫婦はCさんが就職後に転職を繰り返していることを気にかけて「万が一のときのために」と退職金の一部である約2,200万円は使わずに貯金しています。そのほかの資産としては、時価約7,100万円の自宅(戸建て)があります。
自宅のリフォームをするとなるとそれなりの費用がかかりますが、夫婦で暮らしていくうえで家計が破綻することはなさそうです。
また今後、老人ホームなどの介護施設に入居することがあっても、費用の捻出は可能でしょう。もしその施設が高額であれば、自宅を売却することも視野に入れます。
Cさんの今後は…
現在49歳のCさんは、就職後に転職を繰り返していましたが、厚生年金に加入していた時期もあります。このまま働くことなく、60歳までAさんが国民年金の保険料を負担すると、65歳からは月約9万円の老齢厚生年金の受給が見込めます。しかし、この受給額だけでは、両親が亡くなったあとの生活は難しいでしょう。
A夫妻は筆者の事務所を訪れる前に、自治体の「地域包括支援センター」や「引きこもり地域支援センター」を訪ねたそうです。そこで、Aさんの介護認定の申請を依頼するとともに、Cさんの自立支援のサポートについて相談したといいます。
そこで受けた助言をもとに、Cさんへ専門医による治療を勧めるようです。センターの就労支援を受けながら、Cさんが安定した収入を得る方法を見つけられるよう夫婦でサポートするということでした。