2010年代から国内で社会問題になっている「8050問題」。中高年の“引きこもり”を高齢の親が支える構図は、定年を迎え介護が必要になる親にとって生活が困窮しかねない深刻な問題です。具体的な事例をもとに「8050問題」の現状と解決策についてみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
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家計不安にトドメを刺す「悲劇」
そんなある日のことです。Aさんが日課の散歩中に歩道の段差でつまずき、足首を骨折してしまったのです。入院期間は短くて済みましたが、退院後もリハビリ病院に通院することになりました。
主治医には「要介護認定を受け、介護保険で介護サービスを受けてはどうですか」と助言を受けました。
介護保険に入るといっても、介護サービスを受けるにはお金がかかります。また、歩行には杖が必須になったことから、できれば段差を減らしたり、廊下に手すりをつけたりと可能な限り自宅をリフォームしたいところです。
ひきこもる息子と、介護が必要になった夫……夫の今後について心身不調の息子に相談するわけにもいかず、妻のBさんは困り果ててしまいます。
自分たちと息子の将来の不安が限界を超えた夫婦は「誰かに相談したい」とファイナンシャルプランナーのもとを訪れました。
日本で深刻化する「8050問題」
80代の親が、50代のひきこもりの子どもの生活を支える「8050問題」は、2010年代から日本の社会問題となっています。
厚生労働省「令和5年度版厚生労働白書」によると、40代以上の中高年の引きこもりの現状は、下記のようになっています。
<引きこもり状態の人(年齢別)>
●40歳~44歳=9.3%、●45歳~49歳=12.8%、●50歳~54歳=18.6%
●55歳~59歳=23.3%、●60歳~64歳=36.0%
<引きこもり状態になってからの期間(年齢別・40~65歳)>
●6ヵ月~1年未満=14.0%、●1年~2年未満=16.3%、●2年~3年未満=19.8%
●3年~5年未満=15.1%、●5年~7年未満=8.1%、●7年以上=26.7%
<引きこもり状態になった主な理由(多い方から順に5つ)>
●退職したこと=36.0%
●病気=22.1%
●新型コロナウイル感染症が流行したこと=19.8%
●人間関係がうまくいかなかったこと=17.4%
●その他=12.8%