「特別寄与料」請求時の注意点

特別寄与料の請求は相続開始後に「相続人」に対して行います。遺産分割協議に参加する必要はありません。

ただし、請求するためには、請求する金額の根拠を明確に示し、その金額に合意・納得が得られることが前提です。

話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に対し、協議に代わる審判を行います。

いずれにしても、トラブルの深刻化を避けるため、弁護士への相談や依頼が妥当でしょう。

法律的に道は開けたものの、依然としてハードルは高いのが現状です。

介護される人と介護する人・支える人の「連携」がカギ

超高齢社会といわれて久しい昨今、介護を必要とする人の数は増え続けています。高齢になれば、誰もがいつ要介護状態になってもおかしくありません。

しかし、介護が必要になったタイミングから「いつまで」介護が続くのか予測できないことから、介護を担当する家族の肉体的・精神的・経済的負担は増していくばかりです。できれば「介護離職」は避けたいところですが、特に50代女性が介護離職を余儀なくされるケースが多いようです。

今回のケースは、日常的に介護に関わることができない夫がAさんの状況を理解し、あらかじめ親子での話し合いがきちんと行われたことで大きなトラブルに発展せずに済みました。家族がそれぞれ「できること」を「できる範囲」で分担し、負担が集中しないよう心がけたいものです。

また、生命保険の受取人をAさんに変更したことで、相続税の計算にあたり非課税枠は使えないものの、確実にAさんに保険金を渡すことが可能となりました。公正証書遺言は被相続人の意思表示であることから、相続発生後の遺産分割協議に優先します。

義姉にとっては、当初想定していた財産を引き継ぐことができなくなりましたが、遺言書のなかで遺留分相当の金額を相続させる旨の記載があったことで、さらに揉める要因となる「遺留分侵害額請求」を行う必要がなくなりました。

Aさんはその後、介護に関わる仕事を始めたそうです。義父の介護経験を生かし、Aさんは第2の人生に前向きな様子でした。

大竹 麻佐子
ゆめプランニング 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)
相続診断士