いつかはやってくる親の介護。家族という閉ざされた空間で行われる介護であるからこそ大きなトラブルになりやすく、殺人事件にまで発展してしまったケースを度々ニュースで目にします。介護をする人、される人の悩みを少しでも小さくするための方法を大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)から一部を抜粋・再編集し解説します。

いいカモにされていた…認知症の母、怪しい金融商品を買わされていたことが発覚。家族が「介護疲れ」に陥らないために、大切なこと
老化と認知症は異なる
55歳ともなると、すでに親の介護がスタートしている人もいるかもしれませんし、介護まではいかなくても、親御さんの老化を寂しく思い、介護の気配を感じている人も少なくないでしょう。
介護5年目のKさんによれば、最初は介護について分からないこと、知らないことだらけだったといいます。
Kさんの介護は、「老化と認知症とは決定的に違うもの」と気づかされたところからスタートしました。
Kさんが母親の認知症に気づいたのは、あったはずの株式が全部解約されて、証券会社の営業マンの口車に乗せられたのか、普通の人が買わないような金融商品に変わっていたことの発覚でした。
かつてバリバリの営業パーソンだったKさんは、「言葉巧みに、いいカモにされていた」と察しがついたので消費者センターや弁護士にも相談、その証券会社の支店に乗り込んで、通話記録も全部聞かせてもらいました。
訴訟という手もあったのですが、すでに認知症の母にとって長い裁判はつらいだろうということで断念はしたものの、あわや老人ホームに入所するためのキャッシュにも事欠くような状況だったのです。
そんな事件をきっかけに大学病院で脳の検査をして、「認知症」の診断がついて投薬治療がスタートしました。
中途半端な医者ではなく、大きな病院で脳検査を
Kさんのアドバイスとしては、中途半端な医者ではなくて、必ず大きな病院で脳を検査することです。「歳を取ったから……」で済ませてしまうと、一気に認知症が進行してしまうからです。
Kさんのご近所で一人暮らしをされている女性はKさんのお母様より10歳近く若いはずなのに、夕方でも「おはようございます」とあいさつし、同じ話を何度も繰り返すまでに、
一気に認知症が進行してしまいました。
その豹変ぶりに、「やっぱり薬ってスゴい」と認知症の進行を抑制させる薬の効果を実感したそうです。
進行が抑制されれば、その間に「お金のこと」「どうしたいのか」という準備ができるのが大きいと。