大手企業を退職した人の多くは、中小企業やベンチャー企業に再就職する傾向にあります。シニア転職の世界では、大手企業で長いキャリアを積んできたとしても、必ずしも即戦力として迎えられるわけではありません。中小企業への転職で気をつけておきたいことについて、大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)から一部を抜粋・再編集し解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
「大手出身でも、こんなもんかよ」大手→中小企業へのシニア転職で立ちはだかる〈2つの壁〉【元リクルート社員が解説】
大手企業から中小企業への転職で気をつけたいこと
大手企業の定年退職者、もしくは早期定年退職者の多くの受け皿となっているのは、中小企業やベンチャー企業です。
世の中には大企業の待遇をしのぐ中小企業もあれば、ものすごい技術を持った中小企業も少なくありません。
しかし大手から中小に移った人は、頭では「郷に入れば、郷に従え」という意識で新天地に向かうものの、正直、次の二点には面食らうようです。
まずは、「人材、予算、設備も何もない、ないないづくしの中で、短期間に求められる成果」です。
短期間で求められる成果については、すべての中小企業に当てはまるとは限りませんが、「人材、予算、設備がない」という点は、ほとんどの転職者が前職と比較してしまうため、最初のカルチャーショックとなりやすいようです。
前職の知識が通用するとは限らない
中小企業に移ってみて初めて、前職の部下や若手がどれだけ優秀だったかを思い知らされたという経験者も少なくありません。
自分で考えることをせず、同じことを何回も聞いてくる人は前職にもいましたが、管理職なのに予算計画の立て方を知らない、開発の根本である理論的な知識を持った人が退職して空席のままといったことも。
情報システム部門にJavaを使える人材がいなかったり、「パーセントの求め方」もおぼつかない若手社員であったりしても、なんとかして上手に教育して戦力にしていくのが中小企業のルールです。
「使えない人は取り替える」という、異動を前提とした古き良きエスタブリッシュメント企業のやり方は通用しないのです。
つまり、方法は問いませんが、現有戦力を育てて、駆使して、成果を出すしかないのです。