60歳を過ぎてからの再雇用で悪条件に甘んじてしまうことがないように、事前に定年退職後のキャリアについて考え、準備を始めることが大切です。大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)では、定年後に後悔しないためのセカンド・キャリア戦略の考え方について解説しています。本記事では一部を抜粋・再編集し、を解説します。

気力も体力も限界です…60歳、日本の高齢サラリーマンを襲う<事実上の戦力外通告>である定年退職制度。その後、「やりがいのある職」に就いている人がやっていること
自身のキャリアの棚卸し、自己分析をし、60歳以降の方向性を決定
60歳以降、定年退職後、そのまま雇用延長を選ぶのか、別の会社に転職するのか、はたまた起業や開店をするのか、その選択、準備を開始する適齢期が55歳だからです。
まあ、ホントはもっと早くてもいいのですが、タイミング的には役職定年となるターゲット年齢の55歳くらいがちょうどいいと思います。
役職定年というのは、「後進に道を譲れ」という戦力外通告に等しいのですから、プロ・アスリートの「自由契約」同様、宮仕えもここまでという意味に等しいのではないでしょうか。「ラインオフ」「ポストオフ」と呼ばれるくらいですから。
ただ、年収もピークを迎えているために、その年収の高さから、なかなか転職先も見つからないので、役職手当がなくなってもそれなりの報酬が約束されているなら、定年まで残るのが得策ということになります。
問題は、定年後の再雇用のタイミングです。60歳以上は、年収は良くて3割減、半減は普通で、新人社員並みや以下、時給1200円程度まで引き下げられます。しかも、週5日勤務で副業禁止が一般的なのではないでしょうか。
しかも業務の内容が「これまでと同じ」というのは、人によっては「やりがい搾取」と感じてしまうでしょう。
そこで、他の選択肢がなかったり、まったく準備してこなかったりしたために、そんな悪い条件を甘受することのないよう、会社と交渉するとか、他の企業にもっとましな条件で転職するとかの準備を、55歳からスタートさせてほしいのです。
キャリア戦略を確定するために
まず、やってほしいのは、あなたのキャリアの棚卸しです。
具体的には、自分を客観視できるように、自分用の職務経歴書を3ページ以上でつくってみましょう。
次に、「もっともやる気に満ちて仕事をしていた時」、逆に「もっともやる気を失っていた時」を思い出して、それぞれ、誰とどこで、どんな仕事をしていた時か。
そういう気持ちになったエピソード、その時に大切にしていたことをそれぞれ比較することによって、あなたのモチベーション・リソースや傾向、逆にモチベーションを落とす時の背景や傾向を客観的に自己分析してみましょう。
その次は、職務経歴書や「やる気の比較表」などを振り返りつつ、
2, 褒められたことのあること
3, 好きなこと
を、できるだけ多くリストアップしてください。この1~3 があなたの「強み」であり、60歳以降の人生を切り拓く武器となりますので、最重要マターと言ってもいいでしょう。絶対的強みとか絶対優位ほどのレベルではなく、比較的強いレベルで考えるのがコツです。
1~3 が思い浮かばない場合は、4, として「できること」や「比較的できたこと」で代替してください。
さて、ここまではあなたの「過去」、あなたがどう進んできたかの振り返りでした。そして、現在の立ち位置まで来たわけですが、次は「どこに向かって進むのか?」です。