「仮のゴール」を定める

これまでは、ある意味、会社の指示や命令、辞令に従ってそのレールの上を進めばよかったはずです。

しかし、事実上の戦力外通告、自由契約後ですから、これから「どこに向かって進むのか」は、あなた自身が決めなくてはなりません。

その時の足元を照らしてくれるのが、先の1, 得意なこと、2, 褒められたことのあること、3, 好きなこと、になります。

この1~3 のいずれかがあなたの「強み」だとすれば、それをどういう領域や分野(戦略ドメイン)で発揮したいかを決めれば、あなたのこれからのキャリア戦略の完成です。転職するのか、自身で起業するのかといったことはその次に決めればいいことであって、まずは、キャリア戦略の確定からスタートしましょう。

人間は「仮」であれば決められる

正直、「歳定年後の人生設計をしましょう」とセカンド・キャリア研修やこうしたビジネス書で促されても、明確なアイデアがあるケースのほうが稀に違いありません。

仕事や家族のことで忙殺されていて、自身の定年後のことなどゆっくり考える時間など取れなかったという弁も多いようですが、その本質は結構、「会社人生だったために、自分のこととなると、思考停止になってしまう」ということだったりするのです。

その周辺には「別に、定年後にこれといってやりたいことなどない」「この歳になって、リスクなど冒おかしたくない」「もう、気力も体力も限界……」「ちょっと、ゆっくりしてから考えたい……」と漂流しているような人も散見されます。

しかしながら、かつてそう漠然と何か思っても何もせずに定年を迎え、何となく流れで再雇用を選んでしまった諸先輩は、〝代半ばに、もう少し定年後について計画して行動しておけばよかった〟と後悔しているのです。

別に本人は漂流したかったわけでも、学生時代のようにモラトリアムを楽しみたかったわけでもなく、要は、いろいろな選択肢がありすぎて、決め切れなかったというのが正直なところでしょう。

一方、同じような場面で、漂流を回避できた人の共通点の一つに、「仮のゴール」を設定していたということがあります。

「仮」というのは意外に大切で、人間は「仮」であれば決められるのです。これは意思決定のためのテクニックかもしれません。

職場でも、よくあるでしょう。「とりあえず~」というアレです。「仮」が逆に決断を促すのです。歳まで働くのか、歳からは遊びたいのかも、「仮」なら決められるのです。

大塚 寿
エマメイコーポレーション代表取締役