雇用主に安く買い叩かれる状況から逃れるためのリスキリング(学び直し)は、55歳からでも十分間に合います。また、5年あればいろいろなことが習得できるため、安心して定年を迎えることができるかもしれません。大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)では、55歳から始めるリスキリングについて詳しく解説しています。本連載では一部を抜粋・再編集し紹介します。

60歳、年収は新卒初任給、仕事量は変わらず…定年退職→再雇用の先に待ち受ける現実。「やりがい搾取」されないために、やるべきこと
普通にできることの守備範囲を広げよう
定年後も再雇用後も、みなさんはできれば、自身のやってきたことやスキルが活かせる仕事を望んでいます。当たり前のことです。
しかしこの時、特殊なプロフェッショナル領域でないかぎりは、「できること」が多ければ多いほど、トランプや麻雀の「役」と同様に、人材としての価値が上がるのです。ですから、普通にできることの守備範囲を広げましょう。
そこで念頭に置いてほしいのが、今はやりのリスキリングです。リスキリングというと、何かIT業界の専売特許のようですが、もちろん、それ以外の領域を含めた広い範囲のイメージです。
ここで強調しておきたいのは、55歳からスタートしても60歳の定年までの5年間があれば十分間に合うということです。
リスキリングはテーマ選びが肝心
20代、30代の頃に比べれば、新しいことを習得するのに必要な時間は余計にかかるようになっているかもしれませんが、逆に経験値は高まっています。
しかも「キントーンを習得する」ではなく、「エクセルの欠点を補うためにキントーンのスキルを身につけ、セールフォースではできなかった営業管理帳票を作成できるようにする」という背景を知っていればこそのリスキリングのテーマ選びが肝心です。
「プログラミング」「応用情報技術者」「社労士」といったリスキリングのメニューを見かけますが、私のリスキリングのイメージはもっと実務に寄ったところで、業際、つまりは自身の積み重ねたスキルの隣の領域のスキルを学び直しましょうというスタンスです。
例えば、人事畑の出身であれば、経理のスキルを身につけるために会計システムを使いこなし、決算までできるようになるということですし、逆にIT技術者にはアカウント・マネジメントの一環として、営業や折衝のスキルを習得してほしいと思います。
基本、どんなに苦手でも、50代、60代になっても、時間をかければ何でもできるようになります。もっと言えば、必要に迫られれば、オンラインツールも会計ソフトも短期間で習得できるものです。