十分な資産を持っているにもかかわらず「お金を使うのが怖い」と、感じる人は少なくありません。節約を心がけること自体は決して悪いことではありませんが、必要以上に支出を抑え、貯蓄ばかりに意識が向いてしまうと人生を楽しむ機会を逃してしまうことも……。今回は、66歳の年金生活を送る独身男性を事例に、お金を使うことへの罪悪感を乗り越え、資産を有効に活用することで、より心豊かな人生を送るためのヒントを南真理FPがお伝えします。
食費は1万円台、服は10年モノ…生活苦と思いきや「資産1億円超え」の富裕層。66歳・年金月20万円の元会社員が「行き過ぎた節約生活」を続けるワケ【FPの助言】
太田さんが資産を残して亡くなった場合
もし仮に、太田さんが今の財産のほとんどを使い切らずに亡くなった場合どうなるのでしょうか。太田さんには妹がおり、推定相続人となります。太田さんが遺した遺産(金融資産や不動産等)から葬式費用や非課税財産(墓所や仏壇、生命保険(500万円×法定相続人の数の金額まで)等)、債務を差し引いた金額を算出します。
そして、贈与財産があれば遺産に加算します。仮に、上記の諸々の金額を加算・減算した正味の遺産額が1億円だった場合、基礎控除3,600万円(基礎控除:3,000万円+600万円×1人(相続人の人数))を引いた6,400万円に対して相続税がかることになるのです。
太田さんのように独身であれば、生前にあらかじめ遺言書を作成し、ご自身の想いを形にしておくといいでしょう。遺言書は様々な形式がありますが、公正証書遺言が法的にも安全で確実です。公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書のことをいいます。
お金は「守る」だけでなく「活かす」ことが大切
太田さんのように1億円もの資産を持ちながらもお金を使うことが怖いと感じ、必要以上に節約してしまうケースは少なくありません。しかし、お金は単に貯めるものではなく、自分の人生を豊かにするために活用するものです。
漠然とした不安を解消するためにもキャッシュフロー表を作成し、どれくらい使っても大丈夫なのか可視化することは大変有効です。可視化することで、使ってもいい金額を知ることができ、ご自身の趣味や経験にお金を使うことができます。それは人生に大きな彩りを与えてくれます。
さらに、太田さんは、このまま資産を使い切らずに亡くなった場合、相続税の負担が発生する可能性が高いです。減らさないことに縛られるのではなく、いかに有効に使うかを意識することで、一度しかない人生を楽しむことができるのではないでしょうか。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 令和5年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/
国税庁「財産を相続したとき」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_5.htm