ヘッドハンティングによる転職の場合、年収が大幅アップするケースは少なくありません。それまで働いてきた努力が実った結果ですから、喜ぶのは当然のこと。しかし、過度に舞い上がってしまうと、のちに大きな後悔をもたらすこともあるようです。今回は転職が引き起こした老後破綻危機について、中村さん(仮名)の事例をもとに小川洋平FPが詳しく解説します。
つい浮かれてしまいました…年収2,000万円オファーで転職した56歳会社員、意気揚々と港区のマンションに転居。新生活を始めたが…わずか2年後、小さなアパートの一室で後悔の日々へ【CFPの助言】
転職先で待ち構えていた大きな壁…わずか2年で退職へ
こうして外資系不動産会社に転職した中村さんでしたが、喜びは長く続きませんでした。1年もしないうちに営業成績の低迷に悩まされるようになったのです。
銀行時代は銀行の看板で顧客からの信頼を得ていましたが、外資系でメジャーとはいえない不動産会社では、これまでの客先との対応とは勝手が違っていました。
銀行時代の営業スタイルはまったく通用せず、部下達から相談を受けても銀行時代の経験則でのアドバイスになってしまいます。銀行時代に仲がよかった顧客のところを訪れても受注になることはなく、営業部の成績が伸びないまま転職から2年が経過しようとしていたのでした。
成果主義の会社において、そんな状態を役員が許すはずもありません。中村さんはいつも役員から厳しい叱責を受け、部下達への態度も次第にきつくなっていきました。そんな状況を見て、役員は中村さんに対してさらにミーティングの頻度を増やし、そのストレスが部下に向かうという悪循環に。
どう改善していけばよいのか、その方法がわからないまま部下たちの心は離れるばかりです。精神的に追い詰められ激しい胃痛に襲われる日々。結局中村さんは、わずか2年で辞職を決意することになってしまったのでした。
しかし、50代後半の中村さんは、なかなか再就職が決まりません。離職から半年が経過したころには、マンションを維持できるような余裕も無くなってしまいました。
仕事の選り好みはできないと、ひとまず工場で契約社員として働くことに。年収は400万円にまで減り、小さなアパートの一室で生活することになったのでした。
「目先の高待遇に踊らされず、もっと慎重に転職を考えるんだった。浮かれて引っ越しなんてするんじゃなかった」
そう後悔しましたが、いまさら元に戻る方法はありません。