引退後、愛する子や孫と一緒に幸せに暮らす老後に憧れる人も少なくないのではないでしょうか? その際、程よい距離感を保てる「二世帯住宅」は人気の高い選択肢といえます。一見、メリットの多そうな二世帯住宅での暮らしですが、蓋を開けてみると「想定外の事態」が待ち受けていることも。今回は、60代夫婦の事例をもとに、二世帯住宅での同居が失敗してしまうケースについて、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が詳しく解説します。
同居なんてしなければ…〈年金月25万円・退職金2,000万円〉の67歳・元会社員、二世帯住宅で“夢の老後生活”を始めるも一転、大修羅場→親子断絶へ。さらに判明する「衝撃の事実」に絶句【FPの助言】
孫は可愛いが…不満が募る日々
ある夜、浩二さんは体調が優れず、いつもより早めに寝室へと向かいました。しかし、そんな浩二さんの耳に響いてきたのは、2階からの「ドタドタ」という孫の走り回る音。何度も目が覚めてしまい、ついに浩二さんは我慢の限界を迎え、階段下から大声を張り上げてしまいます。
「少し静かにしてくれ!」
突然の怒鳴り声に、2階から下りてきた咲さんは、思いもよらない言葉を返してきました。
「いちいち怒鳴らないでよ。子どもなんだから走るのは当たり前でしょ!」
まさかの冷たい物言いにショックを受ける浩二さん。その日を境に、浩二さんは咲さん夫婦に対して心を完全に閉ざすようになります。一緒に集まる機会はめっきり減り、食卓での笑顔も消え、二世帯住宅に気まずい空気が流れるようになったのです。
同居開始から3年後、とうとう両者の不満が爆発
そんななか、迎えた3年目の年越し。富永さんの妻が「年越しくらい、みんなで一緒に過ごしましょう」と提案し、久しぶりに1階に両家族が集まることになりました。
しかし、咲さん家族は約束の時間になっても姿を見せません。30分ほど遅れてようやく下りてきたものの、どこかけだるそうな雰囲気を漂わせていました。
静かな空気のなか、食卓に並べられた年越しそばのお椀を孫が手に取りましたが、うっかり手を滑らせ、ひっくり返してしまいます。
「ちょっと気をつけなさい!」
時間に遅れてきた娘家族へのイラつきもあり、つい強い口調になってしまった浩二さん。これを手始めに、父と娘の激しい口論が始まります。
娘「そんなに神経質にならなくてもいいでしょ! 子どもなんだから仕方ないじゃない!」
父「仕方ないとはなんだ。うるさい足音も注意しないし、お前、ちゃんと教育できているのか!」
娘「なによそれ! 他人の教育にケチつける気? そっちだってなにかにつけて文句ばっかりじゃない! 足音がうるさいだの、電気代が高いだの、いちいち細かいのよ!」
さらに、怒りに任せて、咲さんから極めつけの一言が飛び出します。
「そんなに神経質になるなら、一緒に住まなきゃよかったじゃない!」
この言葉に、浩二さんの怒りは頂点に達します。思わず「うるさい! 黙れ!」と大声で怒鳴る大修羅場に。
あまりの光景に、孫は驚いて号泣。富永さんの妻や咲さんの夫が仲裁に入り、なんとか大喧嘩は収束するも、こうなってしまってはもはや修復は不可能。話し合いの結果、別々に暮らすという結論に至りました。