最初は問題なく過ごしていたが…

二世帯住宅が完成し、富永さん夫婦と咲さん家族の新しい生活が始まりました。新居は、1階が富永さん夫婦の住まい、2階が咲さん夫婦の住まいという構造になっています。さらに、トイレや浴室、キッチンといった水回り施設はそれぞれ別々に設けられ、プライバシーにも配慮がなされた空間となっていました。

最初のころはまさに理想的な二世帯生活。1階のリビングには自然と家族全員が集まり、孫の成長を見守りながら、賑やかで楽しい食卓に囲まれていました。

「これが二世帯住宅の良さだな」

浩二さんは、娘家族と一緒に過ごせる幸せをかみしめ、孫の無邪気な笑顔に癒される日々が続きました。

しかし、同居を始めて半年が過ぎた頃から、浩二さん夫婦は次第に居心地の悪さを感じるようになります。原因は、2階から聞こえる孫の足音。孫は元気いっぱいで、家中を走り回ることが日常茶飯事。特に朝早い時間や夜遅い時間に「ドタドタ」という足音が響き渡ると、1階に住む浩二さん夫婦は静かに過ごすことができず、徐々に心身ともに疲労感が募るようになりました。

さらに、光熱費の問題も浮き彫りになります。当初は「折半」という取り決めでスタートしたものの、娘夫婦の生活スタイルは、浩二さん夫婦とは大きく異なっていました。

たとえば、電気代。娘夫婦は夏も冬もエアコンをつけっぱなしの生活でしたが、浩二さん夫婦は節約を心がけ、無駄な電気はこまめに消す生活を続けていました。それだけに、自分たちの使った分よりも明らかに多い光熱費に、だんだん不公平感を抱くようになります。