引退後、愛する子や孫と一緒に幸せに暮らす老後に憧れる人も少なくないのではないでしょうか? その際、程よい距離感を保てる「二世帯住宅」は人気の高い選択肢といえます。一見、メリットの多そうな二世帯住宅での暮らしですが、蓋を開けてみると「想定外の事態」が待ち受けていることも。今回は、60代夫婦の事例をもとに、二世帯住宅での同居が失敗してしまうケースについて、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が詳しく解説します。
同居なんてしなければ…〈年金月25万円・退職金2,000万円〉の67歳・元会社員、二世帯住宅で“夢の老後生活”を始めるも一転、大修羅場→親子断絶へ。さらに判明する「衝撃の事実」に絶句【FPの助言】
最初は問題なく過ごしていたが…
二世帯住宅が完成し、富永さん夫婦と咲さん家族の新しい生活が始まりました。新居は、1階が富永さん夫婦の住まい、2階が咲さん夫婦の住まいという構造になっています。さらに、トイレや浴室、キッチンといった水回り施設はそれぞれ別々に設けられ、プライバシーにも配慮がなされた空間となっていました。
最初のころはまさに理想的な二世帯生活。1階のリビングには自然と家族全員が集まり、孫の成長を見守りながら、賑やかで楽しい食卓に囲まれていました。
「これが二世帯住宅の良さだな」
浩二さんは、娘家族と一緒に過ごせる幸せをかみしめ、孫の無邪気な笑顔に癒される日々が続きました。
しかし、同居を始めて半年が過ぎた頃から、浩二さん夫婦は次第に居心地の悪さを感じるようになります。原因は、2階から聞こえる孫の足音。孫は元気いっぱいで、家中を走り回ることが日常茶飯事。特に朝早い時間や夜遅い時間に「ドタドタ」という足音が響き渡ると、1階に住む浩二さん夫婦は静かに過ごすことができず、徐々に心身ともに疲労感が募るようになりました。
さらに、光熱費の問題も浮き彫りになります。当初は「折半」という取り決めでスタートしたものの、娘夫婦の生活スタイルは、浩二さん夫婦とは大きく異なっていました。
たとえば、電気代。娘夫婦は夏も冬もエアコンをつけっぱなしの生活でしたが、浩二さん夫婦は節約を心がけ、無駄な電気はこまめに消す生活を続けていました。それだけに、自分たちの使った分よりも明らかに多い光熱費に、だんだん不公平感を抱くようになります。