52歳会社員の佐藤美咲さん(仮名)は一家の大黒柱。年収1,000万円という高収入を背景に夢のマイホームを購入しました。しかし、その後に想定していなかった体調不良に襲われ、住宅ローン返済が困難になってしまいます。今回の事例では「死なないけど働けない」という事態に対処する備えの重要性について、FPの三原由紀氏が解説します。
年収1,000万円バリキャリ妻と年収240万円自営業夫、50代で念願のマイホームを7,000万円で購入。ゆとりのローン計画だったはずが…2年後、赤字転落で涙の売却へ。発端は妻を襲った「突然の異変」
「死なないけど働けない」に備えるために必要な対策とは?
美咲さん一家は最終的に住宅ローン返済が困難となり、自宅売却を決断。不動産市況が好調だったため高値で売却できました。その後、家賃の手頃な賃貸マンションに引越しも完了。美咲さんは健康を最優先に、転職することも検討しています。
しかし、このようにスムーズに売却できるような幸運ばかりではありません。同じ状況に陥らないためには以下の対策が重要です。
●早めの家計見直し
収入減少時には固定費削減や支出抑制が必要です。教育費や娯楽費など柔軟性のある項目から見直しましょう。
●保険商品の活用
更年期リスクも考慮し、「就業不能保険」への加入を検討することで万一の場合でも生活基盤を守れます。ただし、更年期障害で保険金が出るかは保険会社ごとに扱いが異なり、事前に確認が必要です。
実際のところ、美咲さんが加入していた保険からの給付はありませんでした。医療保険は、一般的に入院や手術時の給付に限定され、自宅療養の更年期障害は該当しないためです。家計にとって最大の経済リスクは何か? をよく考えていれば、美咲さんが就業不能になり収入が途絶えることに気づいたかもしれません。
●夫婦で役割分担
家計運営や物件購入時には夫婦で話し合い、現実的な判断を行うことが大切です。美咲さんと健一さんの場合、美咲さん主体で家計運営していたことも反省点の一つです。
●更年期治療と相談先確保
専門医療機関への相談や職場とのコミュニケーションも重要です。早めに適切な支援を受けることで症状悪化を防げます。健一さんの助言もあり、更年期外来で受診できたことは賢明な判断でした。日頃から厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」で知識をつけておくことも大切です。
美咲さん一家の事例は、多くの家庭にも起こり得る現実です。更年期障害は個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題です。正しい理解と備えが、キャリアと家計を守る鍵となるでしょう。
また、うつ病や精神疾患など、さまざまな原因で「死なないけれど働けなくなる」事態に陥ることがあり得ます。女性・男性関係なく、そうなったときにどうするかまで考えたうえで、住宅購入やマネープランについて考えておくと安心です。
<参照>
更年期の仕事と健康に関する定量調査 パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/menopause.html
“更年期ロス”100万人の衝撃 離職による経済損失 年間6300億円 NHKみんなでプラス
https://www.nhk.or.jp/minplus/0029/topic042.html
三原 由紀
プレ定年専門FP®