52歳会社員の佐藤美咲さん(仮名)は一家の大黒柱。年収1,000万円という高収入を背景に夢のマイホームを購入しました。しかし、その後に想定していなかった体調不良に襲われ、住宅ローン返済が困難になってしまいます。今回の事例では「死なないけど働けない」という事態に対処する備えの重要性について、FPの三原由紀氏が解説します。
年収1,000万円バリキャリ妻と年収240万円自営業夫、50代で念願のマイホームを7,000万円で購入。ゆとりのローン計画だったはずが…2年後、赤字転落で涙の売却へ。発端は妻を襲った「突然の異変」
日本社会における更年期離職問題の実態
美咲さんのようなケースは決して珍しくありません。2024年12月にパーソル総合研究所が発表した『更年期の仕事と健康に関する定量調査』では、40~50代の正規雇用で働く女性が抱える健康問題の一つ「更年期症状」が仕事に与える影響や有効な施策を示しました。
この調査によれば、女性の場合、全体40~50代の44.5%が軽度レベル以上の更年期症状を抱えており、最も症状の重い「要長期治療」に該当する人は8%にのぼります。また、軽度レベルでも1日あたり4時間弱、要長期治療レベルでは5時間強も仕事への影響が出て、症状がある時の生産性は平均で50%ほど低下するという調査結果も示されました。
また、NHKが行った「更年期と仕事に関する調査2021」では、更年期症状で仕事を辞めざるをえない、いわば「更年期離職」を経験した人の数は、今の40~50代女性でおよそ46万人。離職による経済損失は年間4,200億円にも上ります。
こうした背景には、日本社会全体で更年期障害への理解不足や支援体制の不備があります。美咲さんの上司のように「更年期なんて大したことない病気だ」という先入観が強い人もいますが、実際には働けなくなるほどの影響が出る人も少なくないのです。こうした状況に対応する制度や職場環境づくりが急務といえるでしょう。