52歳会社員の佐藤美咲さん(仮名)は一家の大黒柱。年収1,000万円という高収入を背景に夢のマイホームを購入しました。しかし、その後に想定していなかった体調不良に襲われ、住宅ローン返済が困難になってしまいます。今回の事例では「死なないけど働けない」という事態に対処する備えの重要性について、FPの三原由紀氏が解説します。
年収1,000万円バリキャリ妻と年収240万円自営業夫、50代で念願のマイホームを7,000万円で購入。ゆとりのローン計画だったはずが…2年後、赤字転落で涙の売却へ。発端は妻を襲った「突然の異変」
原因は「女性特有の病気」…症状悪化で一気に赤字家計へ転落
何科を受診したら良いか迷いつつ、動悸で循環器内科、耳鳴りで耳鼻科、咽頭部の痛みで甲状腺科と渡り歩き、各科で処方された薬を服用するも症状は一向に良くなりません。
そんな様子を見かねた健一さんの助言で更年期外来を受診、ようやく更年期による不定愁訴だと診断されたのです。
もちろん女性にとって更年期障害が身近な病気だという認識はありました。しかし、周囲の友人たちが悩む中で、美咲さんはそれまでほとんど症状を意識せずに暮らしてきました。そのため50代に入ってこんな強い症状に悩まされるとは思っていなかったのです。
とはいえ、原因がわかり一安心。幸いなことに漢方薬の治療により症状も改善し、元の暮らしに戻れると思っていました。
ところが、難局は続きます。相談に乗ってくれていた直属の女性上司がヘッドハンティングされて退職。後任として着任した上司は、パワハラ寸前と評判の男性でした。
長時間労働やストレスにより症状が再び悪化し、有給休暇や病欠を繰り返すようになります。そんな美咲さんを上司は、「できない更年期おばさん」と揶揄し、ついには不本意な異動を命じられることに。
一家の大黒柱として責任感の強い美咲さんでしたが、判断能力も鈍り、このままでは精神的に参ってしまうと最終的には休職を決断します。
休職中に傷病手当金を受け取ることができましたが、収入は年収500万円レベルに半減し、ローン返済比率は危険水域の32%へ跳ね上がりました。教育費やマンション管理費なども重なり、家計は赤字に転落してしまいました。