人材費削減や若手人材の待遇向上など、さまざまな理由により「早期退職優遇制度」を採用している企業も少なくありません。早期退職の場合、定年退職よりも上乗せされた退職金が受け取れるというメリットはありますが、安易な判断では思わぬ「老後破産危機」に陥る可能性も……。58歳Aさんの事例をもとに、早期退職の落とし穴と注意点についてみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
あれっ、あの人辞めたんじゃないの?…月収60万円・貯金3,500万円だった58歳元サラリーマン「喜んで早期退職」も、1年後に“半ベソで出戻り”のワケ【CFPが解説】
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Aさんの「その後」
それから1ヵ月ほど経ったころ、「営業の途中なんですが」といって、Aさんが筆者の事務所に立ち寄りました。表情は以前と打って変わり、にこやかです。
そして、前回の面談のあとの出来事について、次のように話してくれました。
「あれから、言われたとおり夫婦で支出の見直しをしていたら、うちの5年後輩のDが自宅を訪ねてきたんです。いきなりどうしたんだって聞いたら、『今度営業部長に就くことになったんで』って。あいさつだけかと思ったら、『ぜひAさんに戻ってきてほしい』っていうんですよ」
Dさんの話では、Aさんが辞めたあと、営業部の業績が低下。「Aさんが戻ってきてくれたらなあ」という声が上がり、少しでも力を貸してくれないかと声をかけに来たのだそうです。
願ったり叶ったりのAさんは、契約社員ながら、肩書は「営業部付部長」としてC社に出戻り。固定給月7万円+歩合給で働くことになりました。
復帰後の朝礼あいさつでは「あれっ、あの人辞めたんじゃないの?」という声が聞こえてきて心が痛みましたが、それよりも就職先が見つかった感謝やおよそ1年ぶりに働ける喜びから思わず涙ぐんでしまい、うまく話すことができなかったそうです。
「早期退職」検討時は、老後を見据えて慎重に判断を
一見魅力的な「早期退職」ですが、退職後の暮らしをよく考えて決断しなければ、思わぬ落とし穴にハマる可能性が高まります。
従って、検討の際は勢いで判断することを避け、まずは住宅ローンや子どもの教育費など「退職後にもかかる支出」を可視化しておくことが重要です。また、必要であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するなどし、ライフプランの作成など「老後の準備」を万全にしたうえでの慎重な判断をおすすめします。
代表社員
牧野FP事務所合同会社
牧野 寿和