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Aさんの「その後」

それから1ヵ月ほど経ったころ、「営業の途中なんですが」といって、Aさんが筆者の事務所に立ち寄りました。表情は以前と打って変わり、にこやかです。

そして、前回の面談のあとの出来事について、次のように話してくれました。

「あれから、言われたとおり夫婦で支出の見直しをしていたら、うちの5年後輩のDが自宅を訪ねてきたんです。いきなりどうしたんだって聞いたら、『今度営業部長に就くことになったんで』って。あいさつだけかと思ったら、『ぜひAさんに戻ってきてほしい』っていうんですよ」

Dさんの話では、Aさんが辞めたあと、営業部の業績が低下。「Aさんが戻ってきてくれたらなあ」という声が上がり、少しでも力を貸してくれないかと声をかけに来たのだそうです。

願ったり叶ったりのAさんは、契約社員ながら、肩書は「営業部付部長」としてC社に出戻り。固定給月7万円+歩合給で働くことになりました。

復帰後の朝礼あいさつでは「あれっ、あの人辞めたんじゃないの?」という声が聞こえてきて心が痛みましたが、それよりも就職先が見つかった感謝やおよそ1年ぶりに働ける喜びから思わず涙ぐんでしまい、うまく話すことができなかったそうです。

「早期退職」検討時は、老後を見据えて慎重に判断を

一見魅力的な「早期退職」ですが、退職後の暮らしをよく考えて決断しなければ、思わぬ落とし穴にハマる可能性が高まります。

従って、検討の際は勢いで判断することを避け、まずは住宅ローンや子どもの教育費など「退職後にもかかる支出」を可視化しておくことが重要です。また、必要であればファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するなどし、ライフプランの作成など「老後の準備」を万全にしたうえでの慎重な判断をおすすめします。

代表社員
牧野FP事務所合同会社
牧野 寿和