どんなに潤沢な老後資金を蓄えていても、何が起こるかわからないのが人生。今回、定年後、妻に離婚を切り出された元エリートサラリーマンの事例をもとに、牧野FP事務所の牧野CFPが近年増えている「熟年離婚」で起こりうる老後の貧困について解説します。
とんだ誤算でした…〈退職金3,000万円・年金月28万円〉の67歳・元大手企業常務、“安泰の老後”が突如終焉。家を失い、ボロボロの築古アパートで暮らし始めたワケ【FPの助言】
Aさんの高級老人ホーム入居計画
Aさん(67歳)は、住宅ローンを払い終えた都内の分譲マンションで、妻のBさん(65歳)と二人で暮らしていました。
Aさんは60歳のときに大手企業を常務で退職し、65歳まで系列会社の役員を務めて、現在は完全リタイアしています。Aさんは勤めている間も退職後も、家庭を顧みることはありませんでした。
退職当時の貯蓄は、2社の退職金を含めて5,800万円余り。現在の収入は、Aさんが老齢厚生年金を月約23万円、くわえて75歳までは企業年金を月5万円。またBさんも、今年から老齢厚生年金を月約8万5,000円受給して、合計月約36万5,000円です。
Aさんは、70歳になったら現在住んでいるマンションに初孫が誕生した一人息子のCさん家族を住まわせ、自分たち夫婦は高級老人ホームで余生を過ごそうと考えていました。
退職後も家庭を顧みない夫に嫌気が差したBさん
A家の家計管理は、Aさんが勤めていた時も現在も、妻のBさんに任されていました。
しかしAさんは退職後、Bさんに相談なしに住宅ローンの残債1,500万円を完済し、部屋のリノベーションや新車の購入などにもお金を使ってしまったため、現在貯蓄は2,500万円に減っています。
さらに主な収入が年金となり、給与収入の3分の1に減っても、趣味のゴルフには通っていました。その費用は、勤めていた時はほぼ会社負担でしたが、現在は全額Aさんが払っています。しかも勤めていた時よりも、ゴルフに出かける回数は増えています。
また、勤めていた会社の後輩などとの飲み代も、退職した今もすべてAさんの驕りで支払っていました。見かねたBさんがAさんに、「年金収入だけでは足りない月は、貯蓄を取崩して生活しているのよ」と言っても我関せず。「夫婦で2人部屋に入るほうが、1人で入居するよりも月額費用が安いので、70になったら高級老人ホームに入ってのんびり暮らすか」が口癖でした。
Bさんは、夫が老後の生活に入っても、出かける先が会社からゴルフ場に変わっただけで相変わらず家庭を顧みないことに辟易し、また熟年離婚ドラマをテレビで観て、老人ホームで夫婦で暮らすより一人で暮らしたほうがよいかもと思い、ある策を考えたのでした。