「内覧会」は重要なマーケティング戦略
クリニックを開業する際、多くの場合において「内覧会」が開かれますが、その主目的は、開院予定のクリニックの診療内容、担当する院長の人柄・魅力、設備などを、受診対象エリア内の人々に伝え、クリニックの信頼性と認知度を向上させるという、重要なマーケティングにあります。
診療科のうち、他者へ知られることに抵抗を感じやすい精神科・心療内科では、内覧会を実施するケースは多くないようです。
以下、効果的な内覧会を実現するステップについて見ていきましょう。
STEP1 クリニックの内覧会開催に向けた準備
クリニック開業前に内覧会を開催する場合は、開院予定日の直前の土・日・祝日など、地域住民が多く足を運びやすい日程と時間を設定します。
3連休の場合であれば、連休の後半の方が在宅率は高い傾向があります。時間は一般的には10時から16時など6時間程度が望ましいです。日程が決定した時点で、内覧会専用の業者を取り入れるか、クリニック紹介以外のイベントを入れるかなど、大まかなビジョンを策定してください。
STEP2 クリニック内覧会の広告を作成
医師会に入る医師の場合、ローカルルールはありますが、地域住民へのポスティング(広告など)は、開業前の1回という紳士協定が結ばれているところが多いと思います。
広告には、院長の顔写真、クリニックのきれいな内装、特徴となる医療機器の写真を掲載し、アピールする部分を3つ程度に絞ったほうが、「行きたい」と思える、インパクトのある広告を作成することになります。そのなかに「院長との個別医療相談」「〇〇時からイベント開催」などを入れるとよいでしょう。
元気であるときは医療機関へ足を運ぶ機会はほとんどありませんが、このように健康な方をターゲットとすると、来場者が家族や知り合いにクリニックの存在を口コミする可能性が高くなります。
STEP3 開催当日のスタッフの確保・配置・役割分担
広告作業を終了したあとは、内覧会開催当日に備え、スタッフの人員確保と配置を考えていきます。
内覧会当日は、開業後と似たような体制を整えることが重要です。とくに土・日曜の出勤となるため、スタッフには割増賃金と代休を取るなどの配慮も必要となります。来院者の芳名帳や診察券作成機などを準備し、何名来場したかを把握できるようにします。また、電子カルテのシステムも稼働させ、来場された方の予約確保(ワクチンや健康診断、慢性疾患が多い傾向)もできる準備も整えます。院内に掲示するポスターや、クリニックの詳細の案内となるチラシ、来場者へお配りするノベルティの準備も必要です。
ノベルティは、クリニックのロゴをあしらったボールペンやメモ帳などの文具用品、冷蔵庫に貼付できるマグネット、夏季ならうちわなども認知を高める手段となります。
最も重要なのは、内覧会の目的を医師とスタッフとで共有することです。「当院のウリ、動線、院長とスタッフの人柄などの特徴」などクリニック構造を把握し、意識を共有しておきます。
STEP4 内覧会当日の対応
医院開業時の内覧会開催当日には、清潔感をアピールすることが重要です。内覧会開催の遅くとも1時間前にはすべてのスタッフが集まり、役割の再確認や清掃、天候が不良であれば、マットや傘立て、タオルなども準備しておくとなおよいでしょう。車いすやベビーカーで来場される方も予測されますので、段差への対応を入念にしてください。
内覧会の開始後は、来場者の方には自由にクリニックを見学していただきますが、医療機器は置いてあるだけではどのような検査かわからないことが多いため、医師・看護師が医療機器でできる検査内容や所要時間、優れている点をアピールするとよいでしょう。
芳名帳やクリニックの予約は、医療事務スタッフが対応することが多いです。よくある質問として「院長のこれまでのキャリア」「得意な診療・治療」「健康診断や予防接種の対応」、近年では「発熱などの感染症対応」等があげられます。
内覧会の目的は、患者様にクリニックの存在を理解してもらい、可能であれば、「どのような治療ができるのかわかった」という安心感や、「なにかあればここに来たい」という意識変容を持っていただくことです。いかに多くの来場者のなかから、定期通院となり得る患者様を確保できるかが重要なのです。
こうした施策として、院長が15分程度のセミナーを開く、個別の無料医療相談を行うなど、医師の接遇や説明が要になります。開業・内覧会の目的や意識づけを思い出しながら、懇切丁寧にコミュニケーションをとることで、重要となる開業初期の患者確保となることを肝に銘じ、内覧会に臨むことが重要です。できる限り、診察券の発行、予約の確保などスタッフが一丸となり努めてください。
このほか、内覧会の最後に、医師や看護師の意外な一面を見せるイベントを組むことも効果的です。外部の方を招いてもいいですが、楽器演奏(バイオリンなど)など、医療というサイエンスのほかにも、アートにも優れている側面を演出するのは、来場者へのインパクトを強くする方法です。
ある外科医師は、スポーツ選手を招いて対談会を行ったところ好評で、想定していなかった患者層が通院することになりました。企画によっては、そのような高い効果を得られるケースもあります。
武井 智昭
株式会社TTコンサルティング 医師

