近年の研究によると、女性よりも男性のほうが「妬み」という感情を強く抱きやすいのだそうです。未来あるわが子の可能性を「嫉妬心」でつぶしてしまう“最悪な父親”の心理と特徴について、東大卒の脳科学者である中野信子氏の著書『なぜ、愛は毒に変わってしまうのか』(ポプラ社)より、詳しく解説します。

“男の嫉妬”ほど醜いものはない…子の可能性をつぶす「最悪な父親」の特徴【東大卒の脳科学者が解説】
「妬む父」の心理
近年の研究によれば、実は妬みの感情は男性にこそ強く存在します。
男性、つまり父親が、自分の子に才能の片鱗が見えたときに「この子はすごいぞ」「ここをのばしてあげよう」となればいいのですが、どうも才能の芽があると感じられたとき、それを早いうちに摘んでしまう人がいるようなのです。それも、無意識の場合が多いのでよけいにたちが悪いのです。
父親にとって、妻を奪い合う最大のライバルは息子であるので仕方のないことかもしれません。妬みの感情は男親のほうがひょっとしたら女親より怖いものである可能性もあります。
男性に妬みの感情が強いのは、企業内の人間関係において顕著に表れているでしょう。妬みの強い男性は、見どころのある後輩だと思ったら、自分の下に付けて何とかコントロールしようとしたり、もしくは自己評価を低める方向に心理的に操作したりして芽が出ないようにする。
知識が豊富で野心のある、いわゆる「面白い」タイプよりも、無難でおとなしく、自分が知らないことを言わない後輩がこのような男性からは好かれます。面白いタイプは脅威となる可能性が高いからです。
大学に学生として在籍していた頃、ある研究室の教授が「東大は教育するのがとても楽な大学だ」と言っていたのを耳にしたことがあります。「徹底的に踏みつぶして、這い上がってくるやつだけを使えばいい」というお考えでいらしたのです。
ただし、これは、そもそも学生側に能力も一定以上あることが入試によって保証されており、野心があることもわかっている環境だから使える方法です。這い上がってくる人、使える人が入ってくるところでなくてはこの考え方は成立しません。「こいつは見所がある」と思うからこそ、最初に厳しくするのも一つの教育方法たり得るという部分があったのでしょう。
しかしながら、まずは徹底的に踏みつぶすというその姿勢にはぞっとさせられるようなドロドロしたものを感じさせられました。研究室はある意味「疑似家族」。閉鎖的で密な関係が築かれる場所だからこそ、「父の子殺し」にも似た現象が生まれたのかもしれません。