昔加入した保険。なかには、いまでは信じられないほど利率が高い「お宝保険」があります。しかし、安易に解約すると大損してしまうことも。大事にしたほうがいい保険、シニアになったら解約してもいい保険とは? 本記事ではAさんの事例とともに、定年前後の保険について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
幸運にも〈数千万円〉を手に入れた59歳サラリーマン父「家族も喜ぶかと」→母と娘から「なんてことを…」「取り返しがつかない」非難轟々のワケ【CFPが解説】
「お宝保険」を手放してしまった父
ある日の夕方、リビングにいた母と娘は、郵便物のなかから1通の封書を見つけました。それは、父が長年契約している生命保険会社からのものでした。現在父は定年目前の59歳。30年以上前、父がまだ若手社員だったころ、結婚してすぐに娘が生まれ「もしものときのために家族を守れるものを」と考え、この生命保険に加入しました。
当時はバブル期。予定利率が5%を超えるような、いまでは「お宝保険」とも呼ばれる商品が数多く販売されていました。父が選んだのも、その中の1つ。月々の保険料はそれなりに高額でしたが、将来の貯蓄にもなるということで、家族のために契約したのです。
「あなた、この封書はどうしたの?」母が父に尋ねました。
「ああ、定年前に保険を見直しましょうっていまの(保険)担当から連絡があって。あの保険を解約したんだ。解約金が結構あったから、みんなで海外旅行でも行こう」とのこと。
父が開けた書類を娘が確認すると、驚くべきことに、数千万円ほど解約返戻金が銀行口座に振り込まれたとの記載がありました。
すると、母の表情が一気に険しくなり、「なんてことを……」とショックを受けています。「あの保険、すごくお得だって聞いてたでしょ? いますぐにどうしても必要ってわけでもないのに!」声を荒げました。
さらに娘も「しかも、家族に相談もしないで勝手に解約するなんてありえないよ! 取り返しがつかない!」と責め立てました。
父は少しムッとしながらも、「俺が自分で稼いで入ってた保険なんだぞ。なんで家族に相談しないといけないんだ?」と反論しました。
しかし、母は「それは家族の将来を守るための保険だったからよ! 家計にとってどれだけ重要だったか、ちゃんと考えてほしかったわ」と泣きそうな声で返しました。
父はしばらく黙り込んだあと、「そんなに大事なものだったのか……」と肩を落としましたが、すでに解約済みであるため、どうしようもない状況です。家族全員に重い空気が漂いました。