熟年離婚の原因となることも多いモラハラ。しかし、見方を変えると「本当の離婚原因」が見つかるケースもあるそうで……。本記事では、離婚カウンセラーである岡野あつこ氏の著書『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(講談社)より一部を抜粋・再編集し、具体的な事例とともに熟年離婚の原因について解説します。
お手伝いさんがいても、友達とLINE、ダラダラしていたので家事は終わりません…嫌味の達人「二世副社長の夫」へ「50代専業主婦」からの猛烈な煽り (※写真はイメージです/PIXTA)

「食洗機の音がうるさい」で離婚

次のケースについて、みなさんはどう思われるでしょうか。

 

一年ほど前、ある女性が私のところに相談にやってきました。年齢は50代で、お子さんが三人います。相談内容は「夫のモラハラに悩んでいる」というもの。ただ、彼女の話を聞いた私はびっくりしてしまいました。夫が「食洗機の音がうるさい」と言って怒る、それが耐えられないので離婚を考えている、というのです。

 

たしかに食洗機の音は結構うるさいので、ストレスに感じる人もいるかもしれません。でも、相手が離婚を考えるくらい怒るのはひどい気がします。相談者の女性は「モラハラ」と言っていますが、そもそも家事に口出しされるのは嫌なものです。既婚女性へのアンケートでも、夫の嫌な言動の第二位に「いろんなことに口出し・干渉する」が入っていました。

 

ただ、くわしく話を聞いてみると、もっと違う問題が浮かび上がったのです。

 

夫の言い分にも一理

夫は父の経営する会社の副社長で、仕事ができるタイプ。段取りがよく、妻にもテキパキとした要領のよさを求めるそうです。一方、相談者女性はエステサロンのオーナーをやっていましたが、あまり段取りがよくないタイプです。結婚後は専業主婦ですが、よく家事のやり方が悪いと怒られているそうです。

 

とくに夕食の用意の仕方が夫から不評のようです。この夫婦は専業主婦の妻が夕食をつくる約束になっています。夫は夜九時には自室に引き上げる習慣なので、夕食は六時から七時くらいにとりたいのですが、いつも夕食の支度が間に合わないそうです。

 

六時に夕食なので、四時とか、五時くらいには準備をはじめる必要があります。でも妻は夕方になってもつい、かかってきた友達からの電話に丁寧に対応したり、LINEをしたりしていたようです。そういうダラダラしたところが夫には耐えがたいようです。

 

ちなみにこの家庭では日中の家事代行サービスを頼んでいて、掃除などの家事の負担はないそうです。夫は仕事以外のことでもきっちりしていて、こだわりが強いタイプ。ちょっとした買い物でも「チーズはこの店でしか買わない」とか、細かいルールがたくさんある人です。ちょっと面倒くさいタイプと言ってもいいかもしれません。

 

食器も高価なものばかりで、重ねると傷がつくので、扱う際は細心の注意が必要です。そのため、普通の家庭よりも夕食の支度は大変かもしれません。でも、夫としては、お手伝いさんもいるし、食材の宅配サービスも使っているので、家事がそんなに大変なはずがない、単に妻の要領が悪いから、夕食の支度が遅れると思っているようです。

 

夕食が遅れるだけでなく、後片付けにも時間がかかるため、食事が全部終わって食洗機をかけるのは夜九時以降。でも夫は夜九時には自室に引き上げ、日によってはそのまま就寝するので、寝入りばなの時間に食洗機が動いてうるさい、寝付けない、となってしまうのです。

 

こう聞くと、夫の言い分にも一理あるようです。

 

夫は子育てにも細かいタイプ。平日の昼間に子どもがサッカーの練習をしに出かけていると、妻に突然電話がかかってきて「三時までに子どもの着替えを用意して塾に届けて」などと「指示」されることも珍しくないとか。

 

でも妻は「いつも来るわけではない指示」を待たずに外出してしまう。夫から携帯に電話があっても、「いま家にいないのでできない」と断るそうです。

 

そんなとき、夫は「残念だったね」と嫌味を言うとか。もちろん「テキパキ用事をこなして、名誉挽回するチャンスをふいにしたね」という意味です。妻は夫のこういう言い方を「モラハラ」と受け取っています。