「医学的根拠」や「科学的根拠」を表す「エビデンス」。最近ではいろいろな場面で聞かれるようになりましたが、例えば私たちにとって非常に大事な医療情報の根拠となる医学論文を調べる場合、どのようなサイトを参照すればよいのでしょうか?本記事では、京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野准教授の田近亜蘭氏による著書『その医療情報は本当か』(集英社)から一部抜粋し、海外の科学ジャーナルに掲載された医学論文から、日本語で書かれた医学論文まで、入手法を詳しく解説します。
最近よく聞く「エビデンス」。医療情報や医学論文を調べたいときの信頼できるサイトとは?【京大大学院准教授が解説】
日本語で書かれた医学論文を探すには
日本語の論文のデータベースもあります。どれも「エビデンスに基づく医療(EBM)」の考えから、「システマティックレビュー」「メタアナリシス」「ランダム化比較試験」「比較臨床試験」「比較研究」「診療ガイドライン」などの各研究デザインによるしぼり込み検索も可能です。
情報の量や規模は先述の『パブメド』など海外のデータベースには遠く及びませんが、日本語で読みやすいというメリットは大きいでしょう。主に次のサイトがあります。
・『J-STAGE』[図表3]
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営。日本の医学・薬学系・工学系を中心に、自然科学、人文科学、社会科学などの科学分野の学会誌、論文を電子化し、ウエブ上で公開。誰もが無料で利用できます。IDとメールアドレスなどを登録すれば、お気に入りの記事の保存、お気に入りの資料を引用する新しい記事配信の通知、検索履歴の保存などのサービスも利用できます。
・『CiNii(サイニィ)』[図表4]
「Citation Information by NII」の略で、国立情報学研究所(NII:National institute of informatics)が運営。日本のあらゆる学術分野の論文、学会誌など各種文献、雑誌記事索引、研究データやプロジェクトを検索できる「CiNii Research」、大学図書館の総合目録データベース「CiNii Books」、博士論文データベース「CiNii Dissertations」の3種があり、ネット上で無料で公開されていて、誰もが登録などなしで利用できます。
CiNiiでは、知りたいキーワードを入力すると、文献のタイトル、著者名、収録誌などから、論文や研究プロジェクトを探すことができ、公開中の論文には提供サイトへのリンクが表示されていて、すぐに論文の全文の閲覧や入手が可能です。医学専門ではないので、他分野の横断検索ができる特性もあります。
無料で日本の論文を探すなら、この2つをあたるとよいでしょう。どちらが検索しやすいか、情報を得やすいか、同じキーワードで検索して比較してください。
ただ、論文の電子化と公開の施策として、国は『J-STAGE』に一元化していく方針を公表しています。『CiNii』の掲載論文も『J-STAGE』に移行するように各学会に推奨したため、今後は『J-STAGE』に論文収載が進むでしょう。
・「医中誌Web」
特定非営利活動法人医学中央雑誌刊行会が運営。利用は有料なので3番目に紹介しましたが、医療関係者にもっとも活用されている日本の医学文献情報のデータベースです。1903年創刊の抄録誌「医学中央雑誌」からスタートした、日本でいちばん歴史あるデータベースで、2000年にネット上で検索ができるサービスに移行しました。
大学や総合病院、研究機関、図書館などによる法人と、「医中誌パーソナルWeb」への個人との各有料契約によって利用が可能です。一部の図書館などにあるデータベース検索サービスを提供するパソコンでは、一般の人が無料で利用できる場合もあります。
■参考
※1:「コクラン・ライブラリー」
https://www.cochranelibrary.com※2: 「コクラン」トップページ
https://www.cochrane.org※3: 「コクラン・エビデンス」
https://www.cochrane.org/ja/evidence※4:「コクラン・ジャパン」
https://japan.cochrane.org/ja田近 亜蘭
京都大学大学院
医学研究科健康増進・行動学分野准教授