「医学的根拠」や「科学的根拠」を表す「エビデンス」。最近ではいろいろな場面で聞かれるようになりましたが、例えば私たちにとって非常に大事な医療情報の根拠となる医学論文を調べる場合、どのようなサイトを参照すればよいのでしょうか?本記事では、京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野准教授の田近亜蘭氏による著書『その医療情報は本当か』(集英社)から一部抜粋し、海外の科学ジャーナルに掲載された医学論文から、日本語で書かれた医学論文まで、入手法を詳しく解説します。
最近よく聞く「エビデンス」。医療情報や医学論文を調べたいときの信頼できるサイトとは?【京大大学院准教授が解説】
エビデンスレベル1のデータベース「コクラン・ライブラリー」
世界中の医学論文をまとめた「システマティックレビューのデータベース」を紹介しましょう。世界中で知られ、医療関係者に活用されているのは、『コクラン・ライブラリー※1(Cochrane Library)』です。国際的に最高水準であると各方面から認められています。各ブラウザの日本語への翻訳機能を使えば、おおむね日本語で表示されます(パソコンやスマホのOSやブラウザによって表示に差があります)。
「コクラン」とは、イギリスの国立のボランティア組織のことで、医療における治療と予防の情報を世界に発信、展開しています。
「コクラン」の公式サイト※2の場合は、いちばん上の「日本語」という文字をクリックすると、本文なども自動的に日本語で表示されます。また、日本語版(後述)もあります。
「コクランとは」というページには、「コクランは、英国に本部を置く国際的なネットワークで、登録された非営利団体であり、英国国立ボランティア団体協議会のメンバーでもあります。」「コクランのビジョンは、質の高いエビデンスに基づいて医療やケアに関する意思決定が行われ、すべての人がより良い健康を享受できる世界です。」などの説明があります。
コクランは毎年国際学会を開催していて、2024年9月のプラハでの学会にはわたしも出席します。「グローバルエビデンス2024」と題し、「健康、教育、社会正義、環境、気候変動など様々な分野の問題を議論するプラットフォームを提供する」とされています。
コクランは現在、世界中で130カ国11万人で構成されているといわれ、『コクラン・ライブラリー』は世界中のシステマディックレビューを収載しています。つまり、『コクラン・ライブラリー』に掲載されている論文は世界でもっともエビデンスのレベルが高い、有用な情報といえるわけです。
同公式サイトにある『コクラン・エビデンス』のページの検索窓に、日本語で病名などを記入して検索してみてください※3[図表1]。複数のエビンデンスレベルが高い論文の抄録を読むことができます。
また、日本にも「コクラン・ジャパン」というセンターがあり、公式サイト※4[図表2]のほか、X(旧ツイッター)やフェイスブックでも情報を発信しています。
さらに、アメリカの学術出版社・ワイリーの日本支社の公式サイト内「EBMプロダクト コンテンツ」というページに、『コクラン・ライブラリー レファレンスガイド』が公開されています。国内の大学などもこれを活用したサイトを公開し、コクラン・ライブラリーの活用の方法を具体的に説明しています。