街中やSNSなどで「健康食品」や「サプリメント」などの広告を目にすることもあるでしょう。それらの広告は法律によって定められたルールに基づき作成されていますが、ルールの隙をつくような表現が並んでいることも……。そこで本記事では、京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野准教授の田近亜蘭氏による著書『その医療情報は本当か』(集英社)から一部抜粋し、健康食品や医薬部外品、医療機器などに関する広告表現を規制している法律を紹介するとともに、「医療情報の真偽を確かめる」コツについて解説します。
「この食品を食べれば2キロ痩せる!」「このドリンクを飲めばがんが治る!」のウソ…街中やSNSにあふれる広告に騙されないために知っておくべき〈3つの法律〉とは?【京大大学院准教授が解説】
健康食品やサプリメントの表示に法律規制あり
多くの人が迷うのは、民間のメーカーなどが発信する、健康食品・サプリメント・医療機器・健康グッズなどの情報の見極めかた、選びかただと思われます。とくにこれらのウェブサイトの広告では、規制の隙をつくような表現が並んでいます。これにも、医療機関が発信する広告規制と同じように、法律がいくつかあります。
医療や健康食品に関する法律など自分には関係がない、と思われるかもしれません。しかし、そのシステムや活動はこうした法律や規制に基づいて実施されていて、われわれは無意識のうちにそれをもとにした消費活動を行っているわけです。このような知識は、「医療情報の真偽を確かめる」際の役に立つでしょう。
ここでは、健康食品や医薬部外品、医療機器などに関する広告表現について、規制している代表的な法律の「医薬品医療機器等法(薬機法)」「健康増進法」「景品表示法(景表法)」を紹介しながら話を進めます。
健康食品はあくまで「食品」
医薬品医療機器等法※1(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、名称が長いので、一般には、略して「薬機法」と呼ばれます。2014年に改正された「旧薬事法」のことで、所管は厚労省です。耳にしたことがある人も多いでしょう。
この法律の目的は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具などについて、製造・販売・安全対策まで規制し、適正化をはかることです。これらを扱う事業者は、薬機法に従わなければなりません。
一般の消費者がとくに気をつけたいのは、「健康食品やサプリメント」の広告です。
まず、健康食品とサプリメントはどう違うのでしょうか。日本では薬機法にて、医薬品、医薬部外品、化粧品は定義がされていますが、健康食品やサプリメントは現在、行政上の定義がありません。そのため、これらの違いを明確に述べることはできません。
一般に、「健康食品とは体やメンタルに良さそうな食べものや飲みもの」、「サプリメントとはその錠剤やカプセル状のもの」とイメージされているのではないでしょうか。
では、健康食品やサプリメントの行政上の分類はどうなるのでしょうか。定義がないので、実はあくまで「一般食品」になります。ここがポイントです。
一般食品であるからには、あたかも医薬品のように、病気や症状、心身の機能への効果や効能をうたったり、広告したりすることはできません。また、「毎食後に飲む」とか「1回に2粒を1日3回」といった飲むタイミングや分量の指定もできません。
たとえば、「この食品を1日3回、3カ月間食べ続けると、2キログラムはやせる」「〇〇ドリンクを1カ月飲んでがんが治った人がいます」といった表現は、薬機法違反となるわけです。